箱入り娘ですが、契約恋愛はじめました【最終番外編】
「いろはちゃん、本当に可愛くなっちゃって」

美野里と現れた柘植さんが言う言葉は、たぶん美野里の狙い通りなんだろうな。

「うう、こんなはずではという気分です」

私は美野里の方をじろりと睨む。綺麗な花嫁さん路線をファンタジー妖精さん路線に変えたのは、美野里と母だ。

「いや~、斉田さんナイスチョイスだわ、このドレス」
「お褒めに預かり光栄です。いろはプロデュース歴三年ですので」

ハジメさんの言葉に、美野里が神妙な顔で頷く。私以外の利害が一致しているのが、甚だ納得いかないんですけど。


式は進み、デー管の山梨部長と第一営業部の部長がそれぞれ挨拶。
ケーキカットとファーストバイト。ハジメさんの口いっぱいにケーキを詰め込んだのはわざとじゃない。みんながもっとたくさんスプーンに載せろって煽るんだもの。結果、ハジメさんは顔半分がクリームで真っ白になった。
子どもっぽいところのあるハジメさんは容赦なく私の口にもケーキを詰め込んでくれ、私たちは真っ白な顔で記念撮影した。

ブーケは最初から美野里にプレゼントしようと決めていた。

「次は美野里に幸せになってほしい」

そう言って、美野里に百合の生花のブーケを渡すと、気が強くしっかり者の美野里の瞳から大粒の涙がこぼれた。

思えば、最初の最初から美野里は私の協力者でいてくれた。時に苦言も交え、私を心配し続けてくれた。私がこうして幸せになれたのは美野里のおかげでもあるのだ。

「いろはの花嫁姿が見られて嬉しい。柏木さんと幸せになってくれて嬉しいよ」

子どものように泣く美野里を抱き締め、私も涙をこぼした。
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