With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
⑰
試合が再開される、ノーアウト1、3塁。相手の打順が下位に向かうのは救いだけど、大ピンチであることは間違いない。
「締まって行こう。」
キャプテンがナインにそう声を掛けて、腰を下ろす。
注目の第1球、投球と同時に1塁ランナ-がスタ-トを切る。
「えっ?」
まさかの盗塁だ、ランナ-がピッチャ-ということもあって、完全にノーマ-クだった。そして正直、それを警戒する余裕も、こちらにはなかった。キャプテンは2塁送球を諦めるしかなかった。
スッと立ち上がり、ベースに立った小林くんは、同じ1年生とは思えないくらいの余裕の笑みを浮かべる。これで更にピンチが広がり、ワンヒットで2点取られてしまう状況に。
「3塁ランナ-は仕方がない、2塁ランナ-を絶対に返らせないようにシフトを敷け。」
監督はやむなく、初回と同様な指示をナインに送る。だけど、白鳥くんの投じた2球目は、甘いコ-スに入り、相手打者の餌食になる。レフト前に飛んだヒットで、3塁ランナ-はもちろん、2塁ランナ-もホームイン。球場に徹フリ-クの悲鳴が上がる。
動揺した白鳥くんの制球は定まらず、続く7番に四球、8番に送られて、またワンアウト2、3塁。ワンヒットで更に2点だ。
「ここで止めねぇと、上位打線に回って、大量失点につながるぞ。」
焦ったような佐藤くんの言葉に、私も頷くしかない。好投手小林雅則相手に、これ以上の失点は致命傷になりかねない。
マウンドに内野手が集まって、白鳥くんを激励する。
「余計なことを考えるな。俺のミットだけ見て、全力で投げて来い。」
「三振にこだわらなくてもいい。打たせて行け、俺達がしっかり守ってやる。」
「わかりました。」
キャプテンと澤田さん、3年生2人の言葉に、白鳥くんが頷く。
「ワンアウトは取れた、落ち着いて行こう。」
「ああ。」
最後に松本くんがそう声を掛けて、みんながポジションに散る。
「白鳥、落ち着け。お前が普通に投げれば、9番なんかに打たれるはずねぇよ。」
「うん。」
私たちもベンチで固唾を飲んで見守る中、白鳥くんは投球を再開するが、なかなかストライクゾーンにボールが来ない。キャプテンも苦心のリードを続けているが、厳しい状況が続く。
それでも最後は三振に切って取った。
「今のストレ-トは本来の白鳥のボールだ。これで落ち着きを取り戻せればいいが。」
拍手をしながらそう言ったのは、白鳥くんのボールを練習でいつも受けている村井さんだった。
「締まって行こう。」
キャプテンがナインにそう声を掛けて、腰を下ろす。
注目の第1球、投球と同時に1塁ランナ-がスタ-トを切る。
「えっ?」
まさかの盗塁だ、ランナ-がピッチャ-ということもあって、完全にノーマ-クだった。そして正直、それを警戒する余裕も、こちらにはなかった。キャプテンは2塁送球を諦めるしかなかった。
スッと立ち上がり、ベースに立った小林くんは、同じ1年生とは思えないくらいの余裕の笑みを浮かべる。これで更にピンチが広がり、ワンヒットで2点取られてしまう状況に。
「3塁ランナ-は仕方がない、2塁ランナ-を絶対に返らせないようにシフトを敷け。」
監督はやむなく、初回と同様な指示をナインに送る。だけど、白鳥くんの投じた2球目は、甘いコ-スに入り、相手打者の餌食になる。レフト前に飛んだヒットで、3塁ランナ-はもちろん、2塁ランナ-もホームイン。球場に徹フリ-クの悲鳴が上がる。
動揺した白鳥くんの制球は定まらず、続く7番に四球、8番に送られて、またワンアウト2、3塁。ワンヒットで更に2点だ。
「ここで止めねぇと、上位打線に回って、大量失点につながるぞ。」
焦ったような佐藤くんの言葉に、私も頷くしかない。好投手小林雅則相手に、これ以上の失点は致命傷になりかねない。
マウンドに内野手が集まって、白鳥くんを激励する。
「余計なことを考えるな。俺のミットだけ見て、全力で投げて来い。」
「三振にこだわらなくてもいい。打たせて行け、俺達がしっかり守ってやる。」
「わかりました。」
キャプテンと澤田さん、3年生2人の言葉に、白鳥くんが頷く。
「ワンアウトは取れた、落ち着いて行こう。」
「ああ。」
最後に松本くんがそう声を掛けて、みんながポジションに散る。
「白鳥、落ち着け。お前が普通に投げれば、9番なんかに打たれるはずねぇよ。」
「うん。」
私たちもベンチで固唾を飲んで見守る中、白鳥くんは投球を再開するが、なかなかストライクゾーンにボールが来ない。キャプテンも苦心のリードを続けているが、厳しい状況が続く。
それでも最後は三振に切って取った。
「今のストレ-トは本来の白鳥のボールだ。これで落ち着きを取り戻せればいいが。」
拍手をしながらそう言ったのは、白鳥くんのボールを練習でいつも受けている村井さんだった。