With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
8回裏。先頭の9番栗田さん、1番大宮くんは連続三振。
「ダメだ、どうしてもタイミングが合わない。」
普段は自信満々の大宮くんが、首をひねりながらベンチに帰って来る。本当に小林雅則とは相性が悪いらしい。早くもツーアウト、この回は厳しいかと思ったけど、2番の東尾さんが粘って四球を選ぶ。思わず天を仰ぐ小林くん。
「だいぶ余裕がなくなって来たな、ここが勝負所だ。」
そんな小林くんの様子を見て、キャプテンがつぶやく。ツーアウトだけど、白鳥、西、松本、河井とウチの打線の中軸の登場だ。
「白鳥、なんとかキャプテンまで回せ!」
佐藤くんの大声の檄に、白鳥くんが頷きながら、打席に入る。
「白鳥が出塁すれば、ホームランで逆転という状況でキャプテンだ。それは小林もきついだろう。」
「そうだね。」
先ほどはヒットを打たれているだけに、小林雅則も慎重に投球に入る。キャプテンが言うように、こちらを見下して投げて来ていた前半の姿とは違う。キャプテンにしか投げて来なかった変化球を交えて、なんとしてもここでこちらの攻撃を断ち切りたいという意図がありありと見て取れる。
それに対して、白鳥くんも際どいボールをファール、ファールでカットして行き、懸命に食い付いて行く。
「さすがに徹はピッチャ-心理がわかっている。この場面でああ、ねちっこくされるの堪えるはずだぜ。」
大宮くんの言葉通り、根負けしたように小林雅則は結局四球を出す。思わずガッツポ-ズの白鳥くんに、スタンドからは悲鳴にも似た黄色い声が上がる。
「交代もあるぞ。」
「でも小林くん以上のピッチャ-が東海高校にいる?」
「うん、確かにな・・・。」
肩で息をし、明らかに限界を迎えているように見える小林くん。でも東海高の監督に動きはない。こちらの応援団の大歓声の中、打席に立ったキャプテンに対し、でも小林雅則の闘志は衰えず。腕を振って、真っ向からボールを投げ込んで来る。
「まだ速ぇ・・・。」
「やっぱりすげぇピッチャ-だ。」
「うん・・・。」
私たちが息を呑んでいると、2球目、キャプテンは待ってましたばかりに直球を打ち返す。
「やった!」
打球は糸を引くようにレフト前へ。しかし打球を処理したレフトからの返球が素早く戻って来て、セカンドランナ-の東尾さんは三塁ストップ。
「当たりが強すぎた。」
「ああ、あれじゃ俺でも還って来られない。でもこれでツーアウト満塁だ。」
(松本くん・・・。)
スコアブックを記す私の手に、知らぬ間に力が入っていた。
「ダメだ、どうしてもタイミングが合わない。」
普段は自信満々の大宮くんが、首をひねりながらベンチに帰って来る。本当に小林雅則とは相性が悪いらしい。早くもツーアウト、この回は厳しいかと思ったけど、2番の東尾さんが粘って四球を選ぶ。思わず天を仰ぐ小林くん。
「だいぶ余裕がなくなって来たな、ここが勝負所だ。」
そんな小林くんの様子を見て、キャプテンがつぶやく。ツーアウトだけど、白鳥、西、松本、河井とウチの打線の中軸の登場だ。
「白鳥、なんとかキャプテンまで回せ!」
佐藤くんの大声の檄に、白鳥くんが頷きながら、打席に入る。
「白鳥が出塁すれば、ホームランで逆転という状況でキャプテンだ。それは小林もきついだろう。」
「そうだね。」
先ほどはヒットを打たれているだけに、小林雅則も慎重に投球に入る。キャプテンが言うように、こちらを見下して投げて来ていた前半の姿とは違う。キャプテンにしか投げて来なかった変化球を交えて、なんとしてもここでこちらの攻撃を断ち切りたいという意図がありありと見て取れる。
それに対して、白鳥くんも際どいボールをファール、ファールでカットして行き、懸命に食い付いて行く。
「さすがに徹はピッチャ-心理がわかっている。この場面でああ、ねちっこくされるの堪えるはずだぜ。」
大宮くんの言葉通り、根負けしたように小林雅則は結局四球を出す。思わずガッツポ-ズの白鳥くんに、スタンドからは悲鳴にも似た黄色い声が上がる。
「交代もあるぞ。」
「でも小林くん以上のピッチャ-が東海高校にいる?」
「うん、確かにな・・・。」
肩で息をし、明らかに限界を迎えているように見える小林くん。でも東海高の監督に動きはない。こちらの応援団の大歓声の中、打席に立ったキャプテンに対し、でも小林雅則の闘志は衰えず。腕を振って、真っ向からボールを投げ込んで来る。
「まだ速ぇ・・・。」
「やっぱりすげぇピッチャ-だ。」
「うん・・・。」
私たちが息を呑んでいると、2球目、キャプテンは待ってましたばかりに直球を打ち返す。
「やった!」
打球は糸を引くようにレフト前へ。しかし打球を処理したレフトからの返球が素早く戻って来て、セカンドランナ-の東尾さんは三塁ストップ。
「当たりが強すぎた。」
「ああ、あれじゃ俺でも還って来られない。でもこれでツーアウト満塁だ。」
(松本くん・・・。)
スコアブックを記す私の手に、知らぬ間に力が入っていた。