With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
私たちが開会式以来の横浜スタジアムの前に降り立ったのは、その2日後。県内各地で行われて来た予選を勝ち抜いて来た8校がここに集い、県代表の座を賭けて戦う時が来た。


今日は2試合、明日は別ブロックの2試合が行われて、ベスト4が決まる。そこから中2日を開けて、準決勝、決勝は連戦。大会は大詰めだ。明協高校野球部のこれまでの県大会での最高成績はベスト8、今日もし勝てば、歴史を1つ塗り替えることになる。


緊張の面持ちで、選手たちがバスから降り立つと、松本くん、白鳥くんの姿を見つけたフリ-クたちから歓声が起こり、応援に来てくれた人たちからも声援が起こる。


球場に入り、試合前の雑務を片付けると、私は久保くんと連れ立って、スタンドに上がった。グラウンドでは今日の第一試合、相模高校VS湘南学園の試合が佳境に入っていた。まずはこれからの試合だけど、勝ち上がれれば、この試合の勝者が、次の対戦相手になるのだから、当然、無関心ではいられない。


「どうなってる?」


尋ねた私に


「7回を終わって6-4、相模高がリード。」


スコアボ-ドに素早く目をやった久保くんが教えてくれる。


「接戦だね。」


「なんと言っても、ベスト8だからね。力の差はそんなにないよ。」


相模高の矢代剛(やしろごう)投手は中学時代、白鳥くん、小林雅則と並んで「神奈川三羽烏」と称された好投手。でも、この大会では打ち込まれるケースが多く、この日も先発の矢代投手の姿は、既にマウンドにはなく、3年生の加賀美(かがみ)投手が投げていた。


「矢代くん、今日もあんまり調子よくなかったのかな?」


「だろうね。僕も彼のピッチングは見たことないけど、中学時代に名前はよく聞いたからね。実際にどんな感じなのか見てみたかった。」


「現状では、今投げている加賀美投手がやっぱりエースということになるね。」


「うん。データで見る限り、ボールのスピ-ドはそれほどでもないけど、変化球を巧みにコーナ-に投げ分ける、やっぱり好投手だよ。」


「そうだね。」


実際に加賀美投手は丹念にコーナ-を突き、相手打者を打たせて取るピッチングを展開していた。


「打てそうで打てないってタイプのピッチャ-だね。だから回がだんだん押し迫って来ると、リードされてる方は、焦らされて、余計に術中にはまるパタ-ンが多いんだよね。」


久保くんの言葉通り、湘南学園は、加賀美投手を打ちあぐみ、結局試合はそのまま相模高校の逃げ切り。ベスト4、1番乗りに名乗りを上げた。


「さ、次は私たちの番だ、行こう。」


「うん。」


その結果を見届けて、私たちはスタンドを降りた。
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