With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
更に私たちが度肝を抜かれたのは、松本哲投手のピッチングだった。
既に戦意喪失状態に追い込まれているのかもしれないけど、バッターは松本さんのボールにかすりもしない。
「速い・・・。」
「小林雅則も速かったが、全然上だ。」
「白鳥くんよりも?」
「残念だけど、今の僕じゃとても・・・。」
みんな、すっかり言葉少なに。ツーアウトを取り、後ろのナインに二本指をかざして、アウトカウントを確認した松本さんは、突然サッとマウンド上で手を上げた。
「どうしたのかな?」
「恐らく、俺と省吾に気が付いて、合図を送って来たんだろう。」
私の疑問にキャプテンが答える。
「えっ、マウンドから私たちが見えてるんですか?」
「目の良さはアイツの野球選手としての大きな武器の1つだ。」
私はキャプテンの言葉を聞いても、まだ信じられない思いだったが
(西、省吾、よく来たな。ゆっくり見て行ってくれ。)
松本哲さんは、ふたりにそう呼び掛けていた。
試合はそのまま一方的に進んで行く。
「よく見ておけ。既に試合は一方的、御崎の勝利はまず揺らがない。だが松本哲は手を抜くこともなく、控え投手にマウンドを譲ることもなく、全力で投げきろうとしてる。アイツはそういう奴だ。」
「キャプテン・・・。」
「アイツは・・・凄い奴だ。」
キャプテンの言葉に私たちは、改めてグラウンドの松本哲さんを見つめる。
結局、試合は16-0、5回コールドで御崎高の勝利。
「打者15人に対して、14奪三振。松本さんのボールを前に飛ばしたバッターは1人しかいません。参考記録ではありますが、完全試合、パーフェクトです。」
久保くんの報告する声に、私たちは誰も言葉を返さない、いや返せなかった。
試合後の挨拶が終わり、スタンドを見上げた松本哲さんは、また私たちの方に向かって、手を振った。
(決勝戦で会おう。)
その松本哲さんの心の言葉は、私たちにも伝わっては来ていた。だけど、キャプテンも松本くんも私たちも、誰ひとりそれに応えることは出来なかった。
現地解散となった私たちは、三々五々家路についた。
だけど、行きのにぎやかさはどこへやら、私たちは重苦しい空気に包まれていた。
既に戦意喪失状態に追い込まれているのかもしれないけど、バッターは松本さんのボールにかすりもしない。
「速い・・・。」
「小林雅則も速かったが、全然上だ。」
「白鳥くんよりも?」
「残念だけど、今の僕じゃとても・・・。」
みんな、すっかり言葉少なに。ツーアウトを取り、後ろのナインに二本指をかざして、アウトカウントを確認した松本さんは、突然サッとマウンド上で手を上げた。
「どうしたのかな?」
「恐らく、俺と省吾に気が付いて、合図を送って来たんだろう。」
私の疑問にキャプテンが答える。
「えっ、マウンドから私たちが見えてるんですか?」
「目の良さはアイツの野球選手としての大きな武器の1つだ。」
私はキャプテンの言葉を聞いても、まだ信じられない思いだったが
(西、省吾、よく来たな。ゆっくり見て行ってくれ。)
松本哲さんは、ふたりにそう呼び掛けていた。
試合はそのまま一方的に進んで行く。
「よく見ておけ。既に試合は一方的、御崎の勝利はまず揺らがない。だが松本哲は手を抜くこともなく、控え投手にマウンドを譲ることもなく、全力で投げきろうとしてる。アイツはそういう奴だ。」
「キャプテン・・・。」
「アイツは・・・凄い奴だ。」
キャプテンの言葉に私たちは、改めてグラウンドの松本哲さんを見つめる。
結局、試合は16-0、5回コールドで御崎高の勝利。
「打者15人に対して、14奪三振。松本さんのボールを前に飛ばしたバッターは1人しかいません。参考記録ではありますが、完全試合、パーフェクトです。」
久保くんの報告する声に、私たちは誰も言葉を返さない、いや返せなかった。
試合後の挨拶が終わり、スタンドを見上げた松本哲さんは、また私たちの方に向かって、手を振った。
(決勝戦で会おう。)
その松本哲さんの心の言葉は、私たちにも伝わっては来ていた。だけど、キャプテンも松本くんも私たちも、誰ひとりそれに応えることは出来なかった。
現地解散となった私たちは、三々五々家路についた。
だけど、行きのにぎやかさはどこへやら、私たちは重苦しい空気に包まれていた。