With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
私たちがグラウンドに戻ると、なにやら中央で仁王立ちしている人が・・・。


「誰だ?」


「あれ、女じゃね?」


確かに顔ははっきり見えないけど、ショ-トカットにパンツルックの明らかな女性だ。


「マッチャンかテッチャンのファンが、勝手にグラウンドに入り込んじゃったんじゃない?」


「とにかく注意してくる。」


私が駆け寄ろうとすると


「こらぁ、マネ-ジャ-が選手と一緒にチンタラチンタラ戻って来て、どうするんだ!」


といきなり怒鳴り付けられて、思わず固まってしまう。そんな私に構わず


「他の1年も同じだ。集合時間ギリギリに戻って来るなんて、いい度胸だな。」


と松本くんたちにも罵声を浴びせ掛けて来るから、みんなも唖然。松本くん、白鳥くんの登場で歓声を上げていたフリ-クたちも一瞬にして静まり返る。そんな私たちの横を、脱兎のごとくに走り抜ける人影が。


「キャプテン・・・。」


私の声に振り返ることもなく、女性の前に駆けつけて


「お、お久しぶりです。」


なんと直立不動で言うと、女性はキャプテンの顔をギロリと見る。


「西、練習再開は何時?」


「1時半です。」


「だよね?10分前集合はどうした?キャプテンとして、そんなことも後輩に教育してないのか!」


「申し訳ありません。」


「他の3年も何やってるんだ?そんなことだから、下級生にポジションを取られちゃうんだよ。」


やや遅れて、これまた慌ててキャプテンの横に並んだ東尾さん、澤田さん、後藤さんたちも一斉に頭を下げてる。


「とにかく早く練習を再開しなよ!」


「は、はい。おい、みんなまずはアップからだ。」


見たことないくらいあたふたしているキャプテンの声に、しかし何事が起こったのか、理解できない1、2年生が戸惑いを隠せずにもたもたしていると


「なにグズグズしてる、行くぞ!」


澤田さんが先頭を切って走り出すけど


「澤田、声が小さい!」


「はい!」


一喝を受けて、澤田さんの声のボリュ-ムが上がる。だいたい3年生がアップの先頭で声出しなんて、今まで見たことない。この光景に私が唖然としていると


「監督、いつからウチの部はこんなだらしなくなっちゃったんですか?困ります!」


と今度は監督に嚙み付く女性。


「いや、面目ない。いつもはこんなことはないんだが、今日はあまりにも暑いから・・・。」


「夏は暑いものです。こんなことで、準決、決勝が戦えるんですか?」


「山下の言う通りだ。すまん。」


バツ悪そうに謝る監督。それを見ながら私は


(山下さん・・・。)


ハッとして、女性の顔を見た。
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