With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
アップが終わると、キャプテンの指示で選手たちが各ポジションに散る。シートノックの始まりだ。
「行くぞ、ファ-スト。」
「はい!」
キャプテンはもちろん、なぜか、監督の声まで午前中とは打って変わって、勢いが増している。その様子を私が少し眺めていると
「ねぇ。」
と声が掛かる。ハッとして振り向くと、いつのまにか私の横に来ている山下さん。思わず背筋が伸びる。
「替えのジャージ、持ってない?」
「はい、ありますけど。」
「じゃ、悪いけど貸してくれない?」
「えっ?」
「創部以来初の県大会ベスト4進出だから、祝福と激励に久しぶりにグラウンドに顔を出してみれば、なにこの体たらく?ちょっと喝入れてやらないと。」
厳しい顔の山下さんに
(いえ、既に十分喝は入ってます。)
と心の中で呟くも、当然口には出せず
「わかりました。」
2つ返事で答えた私は、更衣室に戻って、山下さんにジャージを手渡す。
「ありがとう。じゃ、ちょっと更衣室借りるよ。」
と言って、歩き出しかけたけど
「お手数掛けた後に、こんなこと言ってなんだけど。」
「はい。」
「ポリタンの補充とか大丈夫?この暑さで水なかったら、選手倒れちゃうよ。すぐにチェックして。」
「は、はい。」
私は慌てて、走り出さなくてはならなかった。
ポリタン補給を始めとした、もろもろを済ませて、グラウンドに戻った私は、またまた目の前で繰り広げられている光景に目が点になった。
「サード、何やってる。一歩目の反応が遅い。もう1球!」
と松本くんに厳しい言葉を投げかけた山下さんが、すぐに痛烈な打球を放ち、松本くんはそれをダイビングキャッチ。途端に省吾フリ-クからは大歓声が上がる。
「今のいいよ、さ、もう1球!」
(あの人、ノックしてる・・・。)
いよいよ驚いていると
「ハハハ、みんなすっかり振り回されてるな。」
「星さん。」
松葉杖をついた副キャプテンが笑いながら、声を掛けて来る。
「驚いただろう、山下紗耶香さん。俺たちの2年先輩、お前の前任マネ-ジャ-ということになるのかな。」
「お名前は、前にキャプテンからお聞きしたことがあります。でもまさかノッカ-までされてるとは・・・。」
「副キャプテンも兼ねてたからな。ノッカ-だけじゃない、試合中には監督に作戦の進言もしてた。」
「そうなんですか?」
いよいよ私は驚く。
「見ての通り、とにかく厳しい人で。当時俺らは1年生だったから、おっかなくて、頭上がんなくてさ。」
「・・・。」
「でも、懐かしいな。この雰囲気・・・。」
星さんは、そう言うと、ふっと表情を緩めた。
「行くぞ、ファ-スト。」
「はい!」
キャプテンはもちろん、なぜか、監督の声まで午前中とは打って変わって、勢いが増している。その様子を私が少し眺めていると
「ねぇ。」
と声が掛かる。ハッとして振り向くと、いつのまにか私の横に来ている山下さん。思わず背筋が伸びる。
「替えのジャージ、持ってない?」
「はい、ありますけど。」
「じゃ、悪いけど貸してくれない?」
「えっ?」
「創部以来初の県大会ベスト4進出だから、祝福と激励に久しぶりにグラウンドに顔を出してみれば、なにこの体たらく?ちょっと喝入れてやらないと。」
厳しい顔の山下さんに
(いえ、既に十分喝は入ってます。)
と心の中で呟くも、当然口には出せず
「わかりました。」
2つ返事で答えた私は、更衣室に戻って、山下さんにジャージを手渡す。
「ありがとう。じゃ、ちょっと更衣室借りるよ。」
と言って、歩き出しかけたけど
「お手数掛けた後に、こんなこと言ってなんだけど。」
「はい。」
「ポリタンの補充とか大丈夫?この暑さで水なかったら、選手倒れちゃうよ。すぐにチェックして。」
「は、はい。」
私は慌てて、走り出さなくてはならなかった。
ポリタン補給を始めとした、もろもろを済ませて、グラウンドに戻った私は、またまた目の前で繰り広げられている光景に目が点になった。
「サード、何やってる。一歩目の反応が遅い。もう1球!」
と松本くんに厳しい言葉を投げかけた山下さんが、すぐに痛烈な打球を放ち、松本くんはそれをダイビングキャッチ。途端に省吾フリ-クからは大歓声が上がる。
「今のいいよ、さ、もう1球!」
(あの人、ノックしてる・・・。)
いよいよ驚いていると
「ハハハ、みんなすっかり振り回されてるな。」
「星さん。」
松葉杖をついた副キャプテンが笑いながら、声を掛けて来る。
「驚いただろう、山下紗耶香さん。俺たちの2年先輩、お前の前任マネ-ジャ-ということになるのかな。」
「お名前は、前にキャプテンからお聞きしたことがあります。でもまさかノッカ-までされてるとは・・・。」
「副キャプテンも兼ねてたからな。ノッカ-だけじゃない、試合中には監督に作戦の進言もしてた。」
「そうなんですか?」
いよいよ私は驚く。
「見ての通り、とにかく厳しい人で。当時俺らは1年生だったから、おっかなくて、頭上がんなくてさ。」
「・・・。」
「でも、懐かしいな。この雰囲気・・・。」
星さんは、そう言うと、ふっと表情を緩めた。