With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
練習は午前中で終了。片付けが終わり、監督の周りに集合した私たち。


「大会は明日の準決勝、明後日の決勝、残り2日を残すのみとなった。あと2日、俺たちが戦えるかどうかは、神のみぞ知るというところだが、まずは明日、全力を尽くそう。それから昨日からの2日間、練習をサポ-トしてくれたOGの山下。暑い中、本当にありがとう。最後に後輩たちに、メッセ-ジを頼む。」


監督の言葉に促されて、一歩前に出た山下さん。


「突然、押しかけて来た私を、特に2年生と1年生は何者かもわからなかったのに受け入れてくれて、ありがとうございました。私はマネ-ジャ-だったけど、3年間甲子園を目指して、全身全霊を傾けてきたつもり。でも叶わなかった、県大会はベスト16止まり、最後の夏は3回戦で負けた。全力を尽くして戦ったけど、それが限界だった。でもみんなは、過去の先輩たちが破れなかったベスト8の壁を破って、今全国屈指の激戦と呼ばれる神奈川のベスト4にいる。それだけでももう十分、胸を張る資格はあるよ。だけど、これでもういいって思ってる人いる?西、どう?」


「もちろん、思ってません。」


キャプテンは即答する。


「そうだよね、ここにいる全員が同じだと思う。私だってそう。ここまで来たら、何が何でもあと2つ、死に物狂いで戦って、そして勝って欲しい。みんななら出来る、たった2日間だったけど、一緒にやらせてもらって、私は確信した。このチ-ムは強い、私たちの時とはもちろん比較にならないし、御崎にだって決して引けは取ってないよ。プレッシャ-掛けるようで悪いけど、あえて言わせてもらう。明日の試合はもちろん、必ず御崎を、松本哲を打ち崩して、甲子園に行くんだよ。いいね!」


「はい!」


山下さんの檄に、私たちは力強く応える。もう御崎の強さに怖気づいていた昨日までの私たちはいなかった。そんな私たちを見て、満足そうな笑みを浮かべると


「ありがとうございました。」


と私たちに深々と一礼して、山下さんは監督の横に戻った。


「では、今日は解散。」


監督の言葉に一礼し。輪が解け、歩き出す私たちの横で、3年生たちが、ワッと山下さんを取り囲む。その表情がなんとも明るくて、そして嬉しそうで、怖がってたのも確かだけど、先輩たちが山下さんを慕っているのが、ありありと伝わって来る。そんな彼らに、素敵な笑顔を浮かべて、山下さんは1人1人に声を掛けている。


(羨ましいな・・・。)


正直、そう思った。
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