With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
相模の先発はエースナンバ-1の加賀美投手。


「準決勝だからな。現状で一番いいピッチャ-を先発で起用するのは当然だろう。加賀美は以前、久保から報告があったように、低めの変化球のコントロ-ルが生命線のピッチャ-だ。少し目線を上げて、そのボールを見極めて行け。」


監督の指示に、ナインは頷くとベンチを飛び出して行く。ウチのチ-ムの先攻で試合がスタ-トした。


トップバッタ-の大宮くんは例によって、ボールをよく見極めていく作戦。正直、加賀美投手のボールのスピ-ドは失礼な言い方かもしれないけど普通。だけど前評判通り、コントロ-ルはかなり精密。やはりここまで勝ち残って来た高校のエースともなれば、なにかしらの武器を持っている。


大宮くんは際どいボールをファールでカットして、加賀美さんに少しでも球数を投げさせようとするけど、それはお見通しといわんばかりに、ワンボ-ルツーストライクからキレのいい変化球を投げ込み、大宮くんは手が出ず三振。ワンアウト。


「コントロールだけじゃなくて、ボールのキレも予想以上です。」


帰って来て、大宮くんが監督に報告していると、急にスタンドがざわめき出した。何事かと、ベンチから見上げてみると、第一試合を勝ち上がった松本哲投手以下の御崎高ナインが、姿を現し、そのままスタンドの一角に陣取った。


「敵情視察か。」


「お手並み拝見と言ったところだろう、余裕たっぷりだな。」


後藤さんの言葉に、キャプテンが厳しい声で答えている。正直言って、彼らの登場に私たちは、かなりの圧を感じさせられている。


そのせいではないだろうけど、2番東尾さん、3番河井さんは焦ったように早打ちになって内野ゴロ。あっという間に3アウトチェンジだ。


「焦って早打ちすれば、加賀美さんの術中にはまるだけだな。」


「うん、そうかも。」


松本くんは自分に言い聞かせるように言うと、サードのポジションに向かう。


そしてマウンドでは、こちらのエース白鳥くんが投球練習を始めると、フリ-クたちのボルテ-ジは上がる。その姿をスタンドから、松本哲さんがじっと見つめているのが、ベンチから見える。
< 131 / 200 >

この作品をシェア

pagetop