With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
ついに念願の先制点が入ったけど、矢代投手が気落ちすることなく、次打者村井さんを三振に仕留めて1-0、最小得点差のまま12回裏へ。


この長丁場の戦いにも関わらず、全く疲れを知らないようなフリ-クたちの大声援を受けてマウンドに立った白鳥くん。彼女たちのパワ-で最後のマウンドを乗り切りたいところだったけど、相模高もここで黙って引き下がってはくれない。


先頭バッタ-は矢代投手。凄まじい執念でボ-ルに食いついてきて、四球で出塁。次打者のバントでセカンドへ。ワンヒット同点のピンチに。さすがに肩で息をし始めた白鳥くんに


「あとツーアウトだ。バックを信じて投げろ。」


ファ-ストからキャプテンが声を掛ける。頷いてセットポジションに入った白鳥くんが1球目を投じると、なんとホームベ-ス手前でワンバウンドする暴投。キャッチャ-の村井さんはボールに触れることも出来ずに、矢代くんは悠々三塁へ。ピンチは拡大するけど、先ほどのように敬遠で塁を埋めることは出来ない。なぜなら、そのランナ-が逆転のランナ-になってしまうからだ。


内野手は前進してバックホ-ム体制。前に出れば、相手のヒットゾ-ンが広がるリスクはあるけど、かと言って通常の守備位置では普通のゴロで三塁ランナ-にホームに還られてしまう。そして外野フライは犠牲フライになる恐れがあるし、もちろんヒットはダメだし、ホームランなら逆転サヨナラ負けだ。


つまり三振か内野へのポップフライくらいしか許されない状況。


「白鳥くん、しっかり~!」


両校応援団からの凄まじい声援の中、必死に掛けた私の声はなんとかマウンドまで届いたようで、白鳥くんはサッと手を挙げて応えてくれる。


(そろそろ俺も松本に負けないように、木本さんにいいとこ見せないと。)


白鳥くんが投じた初球、バッタ-が手を出すと、フラフラと右方向へ。


「やった、ポップフライだ!」


私は思わず立ち上がったが、しかし打球は予想外に伸びて行って、セカンドの守備範囲を超えてライトへ。ライトには先程代打に出た佐藤くんがそのまま入っている。彼にとっては今大会初めての守備機会、懸命に前進して最後は地面スレスレでキャッチ。ホッとしていると


「タッチアップだ!」


松本くんの声が聞こえて来る。三塁ランナ-がスタ-トを切ったのだ。あの位置では走って来ないと思ったのに、佐藤くんの捕球体勢を見て、イケると判断したみたいだ。
< 140 / 200 >

この作品をシェア

pagetop