With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
㉑
私たちが学校に帰り着いた時、時計の針は既に18時をとうに過ぎていた。
息つく暇もなく、明日の決勝戦に向けてのミーティング。
緊張の面持ちで、私たちの前に立ったデータ担当の久保くんは
「今更、言うまでもないことですが、明日の対戦相手の御崎高校は、直近4期連続して甲子園出場を果たし、また甲子園でも準優勝1回、ベスト4、ベスト8各1回と上位の成績を収めている、現在の神奈川高校野球界の頂点に君臨しているチームです。」
と切り出した後、エース松本哲投手を中心に投打ともにスキはなく、その牙城を崩すのは、ハッキリ言って、かなり難易度の高いミッションになると告げると、ミーティングルームには重苦しい空気が流れる。
「久保。」
その空気を破るように監督が、久保くんに呼びかける。
「はい。」
「明日の決勝戦、やるだけ無駄か?」
「えっ?」
「パソコンやAIでシミュレーションしてみれば、恐らく100%御崎が勝つ、そう結果が出るはずだ。」
「・・・。」
「今度はみんなに聞こう?明日の試合、やるだけ無駄。あんな暑い中、わざわざしんどい思いをするのもバカバカしいから、放棄試合にしよう、そう思っている者はいるか?」
そう言って、みんなを見渡す監督。もちろん声を上げる選手はひとりもいない。
「何故だ?何故、誰もそう思わないんだ?松本。」
今度は松本くんに呼び掛ける監督。自分が指名されるとは思っていなかったようで、松本くんは一瞬びっくりしたようだったが、すぐに
「僕は・・・兄と対戦することを目標にして、この学校に入学しました。その目標が決勝戦という最高の舞台で現実になり、それを放棄するなんて選択肢は、僕にはありません。それに・・・明日の試合、絶対に勝てないなんて、僕は思ってません。」
松本くんがそう言い切ると
「その通りだ。」
監督が頷いた。
「ウチと御崎、どちらが強いかと言えば、残念ながら向こうの方が上だ。例えば20戦すれば、まぁ向こうが圧倒的に勝ち越すだろう。」
「・・・。」
「だが高校野球はトーナメント戦、一発勝負だ。それも戦うのは、同じ高校生同士、なにが起こっても不思議はない。」
と言って、監督は笑った。
息つく暇もなく、明日の決勝戦に向けてのミーティング。
緊張の面持ちで、私たちの前に立ったデータ担当の久保くんは
「今更、言うまでもないことですが、明日の対戦相手の御崎高校は、直近4期連続して甲子園出場を果たし、また甲子園でも準優勝1回、ベスト4、ベスト8各1回と上位の成績を収めている、現在の神奈川高校野球界の頂点に君臨しているチームです。」
と切り出した後、エース松本哲投手を中心に投打ともにスキはなく、その牙城を崩すのは、ハッキリ言って、かなり難易度の高いミッションになると告げると、ミーティングルームには重苦しい空気が流れる。
「久保。」
その空気を破るように監督が、久保くんに呼びかける。
「はい。」
「明日の決勝戦、やるだけ無駄か?」
「えっ?」
「パソコンやAIでシミュレーションしてみれば、恐らく100%御崎が勝つ、そう結果が出るはずだ。」
「・・・。」
「今度はみんなに聞こう?明日の試合、やるだけ無駄。あんな暑い中、わざわざしんどい思いをするのもバカバカしいから、放棄試合にしよう、そう思っている者はいるか?」
そう言って、みんなを見渡す監督。もちろん声を上げる選手はひとりもいない。
「何故だ?何故、誰もそう思わないんだ?松本。」
今度は松本くんに呼び掛ける監督。自分が指名されるとは思っていなかったようで、松本くんは一瞬びっくりしたようだったが、すぐに
「僕は・・・兄と対戦することを目標にして、この学校に入学しました。その目標が決勝戦という最高の舞台で現実になり、それを放棄するなんて選択肢は、僕にはありません。それに・・・明日の試合、絶対に勝てないなんて、僕は思ってません。」
松本くんがそう言い切ると
「その通りだ。」
監督が頷いた。
「ウチと御崎、どちらが強いかと言えば、残念ながら向こうの方が上だ。例えば20戦すれば、まぁ向こうが圧倒的に勝ち越すだろう。」
「・・・。」
「だが高校野球はトーナメント戦、一発勝負だ。それも戦うのは、同じ高校生同士、なにが起こっても不思議はない。」
と言って、監督は笑った。