With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
朝が来た。ベッドを降り、カーテンを開けた私に、早くも夏のまぶしい光が窓越しに降り注いで来る。


「いよいよ、だな・・・。」


思わずそう口走る。マネ-ジャ-の自分が緊張したり、力んでもしょうがないと言い聞かせてみるけど、正直、昨夜はよく眠れなかった。


(負けたくない、勝ちたい、甲子園に・・・行きたい。)


その思いだけが、今の私の心を満たしている。


「行くぞ・・・。」


そう気合を入れて、部屋を出た私が、朝食を済ませ、身支度を整えて


「行って来ます!」


「行ってらっしゃい、TVで応援してるからね。」


「うん。」


家族に見送られて家を出ると、いつものように久保くんが迎えに来てくれていた。


「おはよう。」


「おはよう。」


笑顔で挨拶を交わして、私たちは肩を並べて歩き出す。


「寝られた?」


「あんまり。」


「私も。」


「僕たちがそうなら、マッチャンたちはもっと眠れなかっただろうな。」


「そうかもね。」


そう言い合いながら、顔を見合わせた私たち。


「勝てる・・・かな?」


「難しいだろうな。パソコンでデータとにらめっこしてると、本当に勝ち目なんてないとしか思えなくなってくるんだ。御崎は、松本哲さんは高校野球のレベルでは、やっぱり抜けてるよ。」


「・・・。」


「でもね・・・そう言って、嘆いたり、諦めてたら何も始まらない。昨日、僕が監督に叱られたのは当たり前なんだよ。戦う前に白旗上げるような部員はいらないんだよ。」


「久保くん・・・。」


「僕もいつの間にか、ただのデータ分析係になっちゃってたみたいだ。もう1度、気合を入れ直して、今日はみんなを力の限り、応援するよ。」


「うん。」


久保くんの言葉に、私は大きく頷いた。


学校には一番乗り・・・と思ったら先客がいた。


「おはよう!」


「山下さん・・・おはようごさいます!」


山下先輩が笑顔で私たちを迎えてくれる。


「すみません、先輩より遅くなってしまって・・・。」


恐縮しながら久保くんが言うと


「いいんだよ。私が興奮を抑え切れなくて、異常に早く来ちゃっただけだから。昨日は正直、一睡も出来なかった。」


山下さんは苦笑い。


「そうなんですか?凄い、私たちより上手がいました。」


私が答えると、3人で笑ってしまった。
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