With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
山下先輩にも手伝っていただき、球場に向かう準備をする。


「ミッチャン、持って来たよ。」


と重そうに久保くんが引きづって来たのは、ここまで同じブロックで戦って来た約90校、その全てからではないけど、ほとんどの高校から託された千羽鶴。


「凄いね、これ。私は結局最終的にはいつも託す立場にしか立てなかったけど、それにしてもここまで大量の千羽鶴は見たことないな。」


「はい、絶対に粗末になんか扱えないです。」


「そうだね。でも今日の相手の御崎高にも同じ数の千羽鶴があるってことだよね。」


「そうですね・・・。」


私たちはなんとも言えない気持ちになって、鶴を見つめていた。


そうこうしているうちに監督や選手たちが続々と到着する。


「あんた達、この鶴を絶対守り抜いて、逆に御崎から鶴を分捕って来るんだよ。」


山下さんがそんな檄をキャプテンたちに飛ばしていて、思わず笑ってしまう。それに見送りに集まって来る学校関係者や生徒たちの数も予想を上回る勢いだ。


「みどり、頑張ってね。」


「私は練習で球場に行けないけど、絶対勝つんだよ。」


「ありがとう。」


美怜やおスミの励ましの言葉に、私は頷く。


そしていよいよ出発。留守を預かる副校長の音頭で万歳が斉唱される中、とても恥ずかしい思いで、私たちは出発する。


「これ、負けたら帰って来られねぇんじゃね?」


誰が呟いた言葉に私は思わず頷いてしまった。


1時間ほどバスに揺られて、ハマスタに到着する。


「さぁ、行くぞ。」


選手達に声を掛けると、まず監督がバスを降りて行く。続いてキャプテン以下3年生、2年生、そして1年生が降り立つと、こちらで出迎えてくれた生徒たちに加え、松本くん、白鳥くんのファンたちが加わって、歓声はいよいよ凄いことに。


「声援だけなら、完全にウチの勝ちだな。」


山上部長の呆れ気味の言葉に


「なんでも勝ってるってのは、悪いことじゃないだろう。」


監督は笑って答えた。


もっとも私たちがグラウンドに入ると、既にこの日先攻に決まっている御崎高が練習を開始していたが、ピッチング練習をしている松本哲さんへの黄色い声援も大したものだ。


「兄弟揃ってモテるって、凄いね。」


私が思わずそう言うと


「哲兄には敵わないし、別に僕は気にしてないよ。」


松本くんはなぜか、不機嫌そうに答えた。
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