With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
「哲のことをよく知っている西くんだけに、まさかツーストライクナッシングから変化球で三球勝負に来るとは思ってなかったんだろう。」
アラサーくらいの年齢と見受けるその人は、久保くんに語り掛けるとはなしに呟く。
「はぁ・・・。」
曖昧に頷いた久保くんに
「さぁ、いよいよ次は注目の兄弟対決だ。」
笑いながら言うと、その人はまたグラウンドに視線を送る。
明協応援席からの大歓声に送られて打席に入った松本くん。
(いよいよこの時が来た、それもこんな大チャンスで。必ず、打つ。)
そう心に決めて、マウンド上のお兄さんを見据える。
一方の松本投手も
(まさかこんな状況で初対戦を迎えるとは思わなかったが・・・とにかくここは絶対に打たせるわけにはいかない。)
厳しい表情で、松本くんを見下ろしている。
そしてその対決は・・・呆気なかった。ワンストライクからの2球目、フルスイングした松本くんのバットからは、しかし快音は響かず、力なく上がったフライはセカンドのグラブに収まった。ランナーは動けずにツーアウト。
項垂れてベンチに帰って来た松本くんに、私たちは掛ける言葉もない。
尚も満塁のチャンスは続いてはいるが、ツーアウト。6番の村井さんは食らい付いて行こうとしたけど、完全に立ち直ってしまった松本投手には手も足も出ずに三振。
ノーアウト満塁のチャンスが、まさかの無得点。勢いよくべンチに引き上げて行く御崎高ナインを私たちは呆然と見つめるしかなかった。
「どうした、試合はまだ始まったばかりだ。ガッカリしてる暇なんかないぞ。」
監督の言葉でハッと我に返ったように
「よし、行くぞ。」
キャプテンがベンチを飛び出し、ナインも後に続く。
「すまない。」
ベンチを出る前、私を見てそう言った松本くん。
「ううん。監督がおっしゃった通り、試合はまだまだこれからだよ。しっかりね。」
私は励ますように言う。
「わかった。」
そう答えて、松本くんもポジションに向かう。
「やられたな。」
スタンドでは、例の男性が呟いていた。
「省吾や西くんを意識して、力み返ってたはずの哲が、ピンチで開き直った面もあるだろうが、当人たちを目の前にした途端、逆に冷静さを取り戻して見事に立ち直って見せた。今回は哲の方が一枚上手だったな。」
「・・・。」
アラサーくらいの年齢と見受けるその人は、久保くんに語り掛けるとはなしに呟く。
「はぁ・・・。」
曖昧に頷いた久保くんに
「さぁ、いよいよ次は注目の兄弟対決だ。」
笑いながら言うと、その人はまたグラウンドに視線を送る。
明協応援席からの大歓声に送られて打席に入った松本くん。
(いよいよこの時が来た、それもこんな大チャンスで。必ず、打つ。)
そう心に決めて、マウンド上のお兄さんを見据える。
一方の松本投手も
(まさかこんな状況で初対戦を迎えるとは思わなかったが・・・とにかくここは絶対に打たせるわけにはいかない。)
厳しい表情で、松本くんを見下ろしている。
そしてその対決は・・・呆気なかった。ワンストライクからの2球目、フルスイングした松本くんのバットからは、しかし快音は響かず、力なく上がったフライはセカンドのグラブに収まった。ランナーは動けずにツーアウト。
項垂れてベンチに帰って来た松本くんに、私たちは掛ける言葉もない。
尚も満塁のチャンスは続いてはいるが、ツーアウト。6番の村井さんは食らい付いて行こうとしたけど、完全に立ち直ってしまった松本投手には手も足も出ずに三振。
ノーアウト満塁のチャンスが、まさかの無得点。勢いよくべンチに引き上げて行く御崎高ナインを私たちは呆然と見つめるしかなかった。
「どうした、試合はまだ始まったばかりだ。ガッカリしてる暇なんかないぞ。」
監督の言葉でハッと我に返ったように
「よし、行くぞ。」
キャプテンがベンチを飛び出し、ナインも後に続く。
「すまない。」
ベンチを出る前、私を見てそう言った松本くん。
「ううん。監督がおっしゃった通り、試合はまだまだこれからだよ。しっかりね。」
私は励ますように言う。
「わかった。」
そう答えて、松本くんもポジションに向かう。
「やられたな。」
スタンドでは、例の男性が呟いていた。
「省吾や西くんを意識して、力み返ってたはずの哲が、ピンチで開き直った面もあるだろうが、当人たちを目の前にした途端、逆に冷静さを取り戻して見事に立ち直って見せた。今回は哲の方が一枚上手だったな。」
「・・・。」