With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
ベンチに戻って来た白鳥くんは、監督のねぎらいを受けた後、私の所に来た。


「白鳥くん、ナイスピッチング。」


私が改めてねぎらうと


「ありがとう。君のお陰だ。」


真っすぐに私に見つめて、白鳥くんは言う。


(白鳥くん・・・。)


私が思わず、その瞳を吸い込まれるようを見つめてしまうと


「それにしても、村井。あの場面でよく高橋相手にインコ-ス攻め出来たな。」


後藤さんの声がして、私はハッとその方を向く。そんな私を見て、白鳥くんが思わず舌打ちしながら、後藤さんを睨んだことに、私は気付いてない。


「久保のお陰ですよ。」


「久保くんの?」


「ああ。高橋さんは確かにインコ-スは得意だけど、高めのボールは打ってもファールになる確率が高い。そう教えてくれたのを思い出してね。ま、そこを正確に投げられる白鳥のコントロ-ルがあっての配球だけどな。」


「そうだったんですか。」


村井さんの答えに、私が白鳥くんを振り向くと、彼はニヤッと笑うと右の親指を立てて見せる。


「なるほどね。じゃ、次は俺の番だ。」


「えっ?」


「みどりにいいとこ見せたいと思ってるのは徹や創だけじゃない。まぁ、見てろよ。」


「大宮くん・・・。」


呆気にとられる私を残して、大宮くんが打席に向かう。明協高、最後の攻撃が始まった。


打席に立った大宮くんを、マウンド上から松本投手は見降ろす。


(あと3人、1人1人全力で打ち取る。そして、必ず勝つ!)


松本投手は初球と投げ込む、自慢のストレ-トが高橋捕手のミットにピシリと納まる。


「ストライク!」


速い・・・打席の大宮くんが思わずベンチを振り返る。


「最終回を迎えて、まだあのスピ-ドが出るの・・・?」


そんな大宮くんの気持ちを代弁するように私は言う。


「まだまだ余力充分ってとこか、全くバケモノかよ・・・。」


佐藤くんも呆れた声を出す。とにかく2回以降、こちらはパーフェクトに抑えられているのだ。


「バケモノじゃない。松本哲は人間、それもお前たちと同じ高校生だ。」


それを窘めるかのように、監督が厳しい口調で言う。私たちがその言葉にハッとすると


「佐藤、次いくぞ。」


監督が続けて告げてくる。


「お、おぅ!」


突然のご指名に、やや焦りながら、しかし佐藤くんは勇躍立ち上がった。
< 158 / 200 >

この作品をシェア

pagetop