With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
閉会式が始まった。


「優勝、明協高校。」


場内アナウンスの声を受けて、進み出た西キャプテンに優勝旗が手渡される。一礼して、それを押し戴くように受け取ったキャプテンは、喜びに満ち溢れた表情で、私たちにかざして見せる。その光景に場内から拍手と歓声が沸き上がる。そして、続いて準優勝校として名を呼ばれた御崎高校の松本哲キャプテンが、進み出ると、明協に対するよりも大きな拍手が沸き起こった。


こうしてセレモニ-も終了し、私たちはグラウンドに一礼して、ベンチを離れる。監督、キャプテン更には松本くん、白鳥くんが記者団から呼ばれて、インタビュ-が行われているのを横目に、私はベンチ裏に急ぐ。マネ-ジャ-には相手校との最後の挨拶という大切な仕事が残っている。


息を弾ませて、私がその場所に着くと、既に御崎高の五十嵐恵美マネ-ジャ-が待ってくれていた。


「すみません、お待たせしてしまって。」


私が頭を下げると、ううんと首を振った五十嵐さんは


「優勝おめでとうございます。」


と祝福の言葉をくれる。


「ありがとう・・・ございます。」


私は頭を下げたが、固い表情になっている自分に気付く。正直、どんな表情をしたらいいのかわからなかった。そんな私に


「明協さんは強かったです、完敗だったと思います。」


五十嵐さんは優しい笑顔を浮かべながら、言ってくれる。


「いえ。御崎高校さんはやはり王者と言われるにふさわしい素晴らしいチ-ムだったです。今日ウチが勝てたのは、御崎さんよりほんの少しツキがあったから、本当にそう思います。」


これは私の実感だった。


「ツキも実力のうちですよ。今日の試合、私たちのチ-ムは負けた。悔しくないと言えば、それはウソだけど、でも・・・私は悔いはありません。だって、ウチも明協さんも全力を尽くして戦った、その結果だから。選手たちもきっと同じだと思う。」


「五十嵐さん・・・。」


五十嵐さんの言葉が心に沁みる。私が言葉を紡げないでいると


「木本さん、これを・・・お願いします。」


真剣なまなざしになった五十嵐さんが、後輩のマネ-ジャ-さんたちと運んで来た千羽鶴を私に託して来る。


「はい。」


私が返事をすると、一緒に来てくれた佐藤くんと澤田さんが受け取ってくれた。
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