With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
エピロ-グ
それから、時は驚くくらい、あっと言う間に過ぎて行って。その日、私はスタンドにいた。まだ午前9時だというのに、容赦ない夏の陽が、降り注いでくる。


「選手が入場します。」


兵庫県下の高校の放送部員の中から選ばれた女子生徒のきれいな声が響く。そして、高校野球ファンにはおなじみの「大会行進曲」が流れ出し、選手が入場して来る。前年度優勝校、北北海道代表校、南北海道代表校・・・そして17番目。


「神奈川県代表、明協高校。」


私たちの学校の名が呼ばれる。プラカ-ドガールに先導されて、まずは県大会優勝旗を持った西キャプテンが、続いてベンチ入りする19名の選手が3列になって行進して来る。後藤さん、東尾さんたち3年生、村井さん、河井さんたち2年生、そして1年生が続く。


私たちの高校が入場したあとも各県代表校の入場は続く。そして50番目、沖縄県代表校が所定に位置に着くと、バックスクリ-ン前で整列していた代表校が一斉にピッチャ-ズマウンドに向かって行進して行く。それは壮観な光景で、入場式のクライマックスといってもいい。


私はじっと仲間たちの方を見つめる。遠くてよくは見えなかったけど、でも松本くん、白鳥くん、大宮くん、佐藤くん・・・みんな緊張した、でも晴れやかな顔で手をいっぱいに振って歩いている。


私は暑さを忘れて、その光景にじっと見入っていた。夢にまで見た甲子園に、私の仲間たちが、確かに立っている。感動が私の中に満ちてくる。


そして、私たちの試合は・・・なんとこのあとすぐ。その時は、私もマネ-ジャ-としてベンチに入る。憧れの甲子園の舞台にみんなと一緒に立つのだ。


(みんな頑張って。そしてもちろん、私もみんなと一緒に戦うから。力の限り・・・。)


私は改めて誓う。なんとも言えない力が、自分の小さな身体にも、満ち溢れて来るの感じながら、私は目の前のセレモニ-を見守っている。


プレイボ-ルは、もうすぐ・・・。



[高1春&夏編 END]
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