With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
高校入学。


哲は当たり前のように、野球部に入部。早くも注目を浴びる存在になって行った。一方の私はと言えば、なぜこの高校に進学したのか、そして何をしたいのか、全く見えないまま。


「じゃ、待ってるから。」


入学式の日、既に春休みから練習に参加していた哲は、野球部の一員として言って来たが、私としては全く気が進まず、部活見学期間はいろいろな部活を体験したが、中学の時にやっていたバスケットも自分では合わなかったなぁと思っていたし、結局入部受付最終日に


(松本と約束したんだから、仕方ないよね・・・。)


という一種諦めの気持ちで、野球部に入部手続きをした。


こうして始まった私のマネ-ジャ-生活。1年生は私ひとり、でも3年生、2年生に2人ずつ居て、計5名は決して少なくはない。でもドラマや漫画で華やかなヒロインとして描かれることの多いスポ-ツ部の女子マネの、その実態は雑用係。それにとにかくキツいし、自分の時間なんて全然取れない。


もともと乗り気でなかった私は、いよいよもって嫌気がさし、退部を考えたけど、ただ1人の1年生として、それなりに期待され、大事にされちゃって、なんとなく言い出し辛い雰囲気になり、3年生のチ-フマネ-ジャ-岡江愛菜(おかえまな)さんが、とにかく熱心で、私も知らないうちに、その熱意に巻き込まれていった。


それにそれまでは、私にとっては、気の合う男友だち以外の何者でもなかった哲を、改めてピッチャ-として見てみれば


(コイツ、凄い・・・。)


って素直に思わされた。野球のことなんか、全くわからない私だったけど、その私の目から見ても、哲のピッチャ-としての能力は、当時の3年生のエースを凌駕してるように映った。


監督は、哲の入学が決まった途端


「これで、ウチは奴のいる3年間の間に、何度か甲子園行けるぞ。」


とうそぶいたそうだし


「軟式出身の選手で、ここまであっさりと硬球に馴染んだ選手は、初めて見たなぁ。」


チ-フマネ-ジャ-の愛菜さんも感心していた。


練習や練習試合を重ねながら、中間、期末試験等々の学校行事をこなして行くうちに、季節は夏。野球部は夏の県大会を迎えていた。優勝すれば、高校球児やマネ-ジャ-なら誰もが憧れる、甲子園大会に出場出来る。私は正直、ピンとこなかったけど、先輩たちを見ているうちに、高ぶるものを覚えていた。
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