With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
哲は1年生ながらエースナンバ-背番号「1」を背負っていた。入学わずか3ヵ月の1年生としては、異例の抜擢。ううん、哲には誰にも文句を言わせない実力があった。
それだけじゃない。哲はなんと野球部員のみならず、校内でもマドンナと人気の高かった愛菜さんのハートを射止め、恋人同士になっていた。
「愛菜さん、ちゃっかりしてるね。」
2年生の先輩マネ-ジャ-が声を潜めて話していた。聞けば、愛菜さんはそれまでエースだった3年生と付き合っていたのだが、あっさり乗り換えたらしいのだ。
大会が始まった。初戦、先発した哲は、相手校打線を全く寄せ付けず、チ-ムは5回コールドで勝利。ここからウチのチ-ムの快進撃が始まり、そのまま決勝戦まで駆け抜けて、甲子園出場を果たした。過去何度か甲子園出場を果たした御崎高だったが、これが4年ぶりの甲子園だった。
哲は途中、何度か他のピッチャ-にマウンドを譲ったけど、それはあくまで休養の為であり、勝負所でマウンドにいたのは、常に彼だった。
「哲、おめでとう、よくやったね!」
「やったよ、愛菜のお陰だ。」
優勝が決まって、学校に引き上げて来た途端に、愛菜さんが哲に抱き着いた。そんな彼女を躊躇うことなく抱き寄せる哲。人目も憚らない彼らの態度に、眉を顰める向きは当然あったけど、今回の哲の活躍の前に、監督も校長も何も言えずにいた。
甲子園では2回戦で敗退。でも1年生エースとして、哲は全国に名を知らしめた。
甲子園大会後に恒例となっている海外遠征選抜チ-ムにも1年生でただ1人選ばれた哲は、3年生が卒業して、新チ-ムになっても、当然その中心となった。秋の県大会は当たり前のように優勝。神奈川代表として臨んだ関東大会は、惜しくも決勝で敗れたが、この大会でベスト4に入れば、翌春の選抜甲子園大会への出場はほぼ決まったようなもので、事実その通りになった。
順風満帆と思われた哲の行く手に、突如立ち込めた暗雲。それは失恋だった。あれだけラブラブだった哲と愛菜さんだったけど、甲子園大会が終わり、野球部を引退すると、愛菜さんは哲と距離を置き始めた。受験勉強が忙しいからというのが理由だったが、クリスマスイブもバレンタインデ-もデートを断られたとしょげる哲に、私も
「今は仕方ないよ。」
と慰めるしかなかった、そして迎えた卒業式。野球部の追い出しセレモニ-が終わると
「哲、今までありがとう。これからはなかなか会えなくなるし、私たち、これで別れよう。」
とあっけらかんと告げると、言葉を失う哲や呆気にとられる私たちを尻目に軽やかに学校を後にして行った。
それだけじゃない。哲はなんと野球部員のみならず、校内でもマドンナと人気の高かった愛菜さんのハートを射止め、恋人同士になっていた。
「愛菜さん、ちゃっかりしてるね。」
2年生の先輩マネ-ジャ-が声を潜めて話していた。聞けば、愛菜さんはそれまでエースだった3年生と付き合っていたのだが、あっさり乗り換えたらしいのだ。
大会が始まった。初戦、先発した哲は、相手校打線を全く寄せ付けず、チ-ムは5回コールドで勝利。ここからウチのチ-ムの快進撃が始まり、そのまま決勝戦まで駆け抜けて、甲子園出場を果たした。過去何度か甲子園出場を果たした御崎高だったが、これが4年ぶりの甲子園だった。
哲は途中、何度か他のピッチャ-にマウンドを譲ったけど、それはあくまで休養の為であり、勝負所でマウンドにいたのは、常に彼だった。
「哲、おめでとう、よくやったね!」
「やったよ、愛菜のお陰だ。」
優勝が決まって、学校に引き上げて来た途端に、愛菜さんが哲に抱き着いた。そんな彼女を躊躇うことなく抱き寄せる哲。人目も憚らない彼らの態度に、眉を顰める向きは当然あったけど、今回の哲の活躍の前に、監督も校長も何も言えずにいた。
甲子園では2回戦で敗退。でも1年生エースとして、哲は全国に名を知らしめた。
甲子園大会後に恒例となっている海外遠征選抜チ-ムにも1年生でただ1人選ばれた哲は、3年生が卒業して、新チ-ムになっても、当然その中心となった。秋の県大会は当たり前のように優勝。神奈川代表として臨んだ関東大会は、惜しくも決勝で敗れたが、この大会でベスト4に入れば、翌春の選抜甲子園大会への出場はほぼ決まったようなもので、事実その通りになった。
順風満帆と思われた哲の行く手に、突如立ち込めた暗雲。それは失恋だった。あれだけラブラブだった哲と愛菜さんだったけど、甲子園大会が終わり、野球部を引退すると、愛菜さんは哲と距離を置き始めた。受験勉強が忙しいからというのが理由だったが、クリスマスイブもバレンタインデ-もデートを断られたとしょげる哲に、私も
「今は仕方ないよ。」
と慰めるしかなかった、そして迎えた卒業式。野球部の追い出しセレモニ-が終わると
「哲、今までありがとう。これからはなかなか会えなくなるし、私たち、これで別れよう。」
とあっけらかんと告げると、言葉を失う哲や呆気にとられる私たちを尻目に軽やかに学校を後にして行った。