With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
その後にわかったことは、愛菜さんは哲に全く本気ではなかったのだ。彼女はマネ-ジャ-としてどうしても甲子園に行きたかった。その夢を叶える為に、自分と付き合えるということをいわば「ニンジン」にして、哲を発奮させるために近付いたのだ。
「私がいた3年間の間に、甲子園に1度も行けないなんてありえないし、あれがラストチャンスだったんだもん。その為には、絶対にあの子の力が必要だったの。いいじゃん、私は夢を叶えられて、あの子は短い間とは言え、私の彼氏になれたんだよ。ウィンウィンじゃん。」
一緒に卒業するもう1人の先輩マネ-ジャ-が、呆れ顔で愛菜さんの言葉を伝えてくれた時、私たちは二の句が継げなかった。
(ちょっと、なにしてくれてるの・・・。)
私は憤った。選抜大会までもう半月に迫ったこの時期に、頼みのエースの心をズタズタにしてくれた愛菜さんのあまりの仕打ちに対して。哲の落ち込みようは、見るに忍びないくらいだった。
「なんとかしなきゃまずいよ。」
愛菜さんの後任のチ-フマネ-ジャ-が、深刻な表情で、私に言って来た。
「そうは言われても、どうしようもないですよね。」
私が答えると
「あんた、確か松本くんとは中学から一緒だよね?」
と聞いて来る。私が頷くと
「じゃ、恵美が彼のこと、慰めてあげてよ。」
なんて言い出すから、私は思わず
「エ~!」
と声を上げてしまった。
「私と松本は、そんなんじゃ全然なくて・・・。」
「そんなのわかってるけど、でもさ。失恋の痛手は新しい恋で癒すしかないって言うじゃん。」
「で、でも・・・。」
「とにかく今は松本くんに一番近い恵美しかいないんだよ。お願い、この通りだから。」
いろんな意味で「違うよ、それ」って言いたかったけど、先輩に拝み倒されて、結局押し切られてしまって、私は哲のもとに向かった。
「松本、辛いのはわかるけどさ・・・とにかく元気出してよ。」
やっては来たものの、何を言っていいかわからなくて、当たり障りのない言葉を掛けた私を、哲は少し見つめていたけど、やがてガバッとばかりに私を抱き寄せた。
「ちょ、ちょっと松本・・・。」
と戸惑いの声を上げたけど
「五十嵐、しばらくこのままでいさせてくれよ。」
なんて言われてしまうと、もともとここに来た目的が目的だけに、突き放すことも出来なくなった。
(西くん、ごめんなさい・・・。)
思わず、そんなことを考えていた。
「私がいた3年間の間に、甲子園に1度も行けないなんてありえないし、あれがラストチャンスだったんだもん。その為には、絶対にあの子の力が必要だったの。いいじゃん、私は夢を叶えられて、あの子は短い間とは言え、私の彼氏になれたんだよ。ウィンウィンじゃん。」
一緒に卒業するもう1人の先輩マネ-ジャ-が、呆れ顔で愛菜さんの言葉を伝えてくれた時、私たちは二の句が継げなかった。
(ちょっと、なにしてくれてるの・・・。)
私は憤った。選抜大会までもう半月に迫ったこの時期に、頼みのエースの心をズタズタにしてくれた愛菜さんのあまりの仕打ちに対して。哲の落ち込みようは、見るに忍びないくらいだった。
「なんとかしなきゃまずいよ。」
愛菜さんの後任のチ-フマネ-ジャ-が、深刻な表情で、私に言って来た。
「そうは言われても、どうしようもないですよね。」
私が答えると
「あんた、確か松本くんとは中学から一緒だよね?」
と聞いて来る。私が頷くと
「じゃ、恵美が彼のこと、慰めてあげてよ。」
なんて言い出すから、私は思わず
「エ~!」
と声を上げてしまった。
「私と松本は、そんなんじゃ全然なくて・・・。」
「そんなのわかってるけど、でもさ。失恋の痛手は新しい恋で癒すしかないって言うじゃん。」
「で、でも・・・。」
「とにかく今は松本くんに一番近い恵美しかいないんだよ。お願い、この通りだから。」
いろんな意味で「違うよ、それ」って言いたかったけど、先輩に拝み倒されて、結局押し切られてしまって、私は哲のもとに向かった。
「松本、辛いのはわかるけどさ・・・とにかく元気出してよ。」
やっては来たものの、何を言っていいかわからなくて、当たり障りのない言葉を掛けた私を、哲は少し見つめていたけど、やがてガバッとばかりに私を抱き寄せた。
「ちょ、ちょっと松本・・・。」
と戸惑いの声を上げたけど
「五十嵐、しばらくこのままでいさせてくれよ。」
なんて言われてしまうと、もともとここに来た目的が目的だけに、突き放すことも出来なくなった。
(西くん、ごめんなさい・・・。)
思わず、そんなことを考えていた。