With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
哲がとっかえひっかえと言っても差し支えないくらいに、彼女たちを弄び始め、何人かの子とは、古い言葉で言う「不純異性交遊」にまで発展しているのを知った私は、とうとう奴を部室に呼び出した。
「いつから哲は、そんな酷い男になったのよ!」
「恵美にそんなこと言われる筋合いはねぇよ。」
私の言葉に、横を向く哲。出会って以来、お互いに苗字呼びだった私たちが、名前呼びに変わったのはひと月ちょっとだったけど、一応カレカノだった名残。
「ねぇ、自分の立場を少しは考えなよ。あんたは今や、神奈川を代表するピッチャ-なんだよ。そんなあんたの素行不良なんて、格好のスキャンダルになっちゃうんだよ。そんなことになったら、あんたは野球を続けられなくなるし、部だって、活動停止に追い込まれちゃうかもしれない。そんなこともわからないの?」
「うるせぇな。仕方ねぇだろ、向こうから言い寄ってくるんだから。『据え膳食わぬは男の恥』って言葉を知らねぇのかよ!」
あまりの言い草に、完全にブチ切れた私は、次の瞬間、哲を思いっきり引っ叩いていた。
「痛ぇな、なにするんだよ!」
怒りに満ちた表情で言う哲に、私も負けずに怒鳴り返す。
「あんた、本当に最低だね。あんたが愛菜さんに手酷く振られて、女子不信に陥ったのは同情するよ。でもさ、その結果、哲がしてることって、結局愛菜さんと同じじゃない。ううん、愛菜さん以上に酷いよ!」
私の言葉に、哲はハッとしたような表情になると俯いた。
「哲、どうして私にはしなかったの?」
「えっ?」
「私はあんたが一番落ち込んでる時に、一応彼女だった。その私を、哲は最初に抱きしめた後は、もう指1本触れようとしなかった。それはなぜ?」
「恵美にそんなこと出来るかよ・・・。」
「私には出来なくて、なぜ彼女たちには出来るの?」
「・・・。」
「哲に言い寄った彼女たちが全く悪くないなんて言わない。でも私はやっぱり、哲の方が何十倍、何百倍悪いと思うよ。そんな哲を私、マネ-ジャ-として応援したくないし、支えたくもない。それに・・・今の哲を西くんが見たら、なんて思う?」
「西・・・。」
西くんの名前を聞いて、思わず哲は私を見る。
「哲はさ、今や神奈川県の高校球児全員が目標とする存在なんだよ。みんながこの夏に打倒御崎、打倒松本哲をスロ-ガンに立ち向かってくるんだよ。今の哲が、そんな彼らと戦える?戦う資格があると思う?」
いつの間にか、私の目には涙が浮かんでいた。そしてその私を見る哲の目からも涙がこぼれた。
「恵美、ごめん・・・。」
そう言って、頭を下げてくれた哲の目は、もう濁ってはいなかった。
「いつから哲は、そんな酷い男になったのよ!」
「恵美にそんなこと言われる筋合いはねぇよ。」
私の言葉に、横を向く哲。出会って以来、お互いに苗字呼びだった私たちが、名前呼びに変わったのはひと月ちょっとだったけど、一応カレカノだった名残。
「ねぇ、自分の立場を少しは考えなよ。あんたは今や、神奈川を代表するピッチャ-なんだよ。そんなあんたの素行不良なんて、格好のスキャンダルになっちゃうんだよ。そんなことになったら、あんたは野球を続けられなくなるし、部だって、活動停止に追い込まれちゃうかもしれない。そんなこともわからないの?」
「うるせぇな。仕方ねぇだろ、向こうから言い寄ってくるんだから。『据え膳食わぬは男の恥』って言葉を知らねぇのかよ!」
あまりの言い草に、完全にブチ切れた私は、次の瞬間、哲を思いっきり引っ叩いていた。
「痛ぇな、なにするんだよ!」
怒りに満ちた表情で言う哲に、私も負けずに怒鳴り返す。
「あんた、本当に最低だね。あんたが愛菜さんに手酷く振られて、女子不信に陥ったのは同情するよ。でもさ、その結果、哲がしてることって、結局愛菜さんと同じじゃない。ううん、愛菜さん以上に酷いよ!」
私の言葉に、哲はハッとしたような表情になると俯いた。
「哲、どうして私にはしなかったの?」
「えっ?」
「私はあんたが一番落ち込んでる時に、一応彼女だった。その私を、哲は最初に抱きしめた後は、もう指1本触れようとしなかった。それはなぜ?」
「恵美にそんなこと出来るかよ・・・。」
「私には出来なくて、なぜ彼女たちには出来るの?」
「・・・。」
「哲に言い寄った彼女たちが全く悪くないなんて言わない。でも私はやっぱり、哲の方が何十倍、何百倍悪いと思うよ。そんな哲を私、マネ-ジャ-として応援したくないし、支えたくもない。それに・・・今の哲を西くんが見たら、なんて思う?」
「西・・・。」
西くんの名前を聞いて、思わず哲は私を見る。
「哲はさ、今や神奈川県の高校球児全員が目標とする存在なんだよ。みんながこの夏に打倒御崎、打倒松本哲をスロ-ガンに立ち向かってくるんだよ。今の哲が、そんな彼らと戦える?戦う資格があると思う?」
いつの間にか、私の目には涙が浮かんでいた。そしてその私を見る哲の目からも涙がこぼれた。
「恵美、ごめん・・・。」
そう言って、頭を下げてくれた哲の目は、もう濁ってはいなかった。