With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
そして、その会場で、私は西くんと再会した。抽選会が終わり、会場を出ようと歩いていると、前方に西くんの後ろ姿が見えた。私がハッとしていると
「西。」
哲が彼に呼び掛けていた。
「おぅ。」
振り返った西くんは、極めて自然に答えたけど、ふと横にいる私に気が付いたようで、軽く目礼してくれる。私も慌てて、頭を下げるけど、それ以上のコミュニケ-ションにはならない。中学時代は、もう少し普通に会話出来てたはずなんだけど・・・。
西くんと少し会話を交わした哲は
「明協とは別ヤマに入ったから、決勝まで行かないと当たらない。」
と言い出した。
「そういうことだな。」
「上がって来い、必ず。待ってるぞ。」
その言葉に、思わずハッと哲をみると、その表情は自信に満ち溢れていた。
「じゃ、またな。」
そう言い残すと、哲は西くんたちに背を向けて歩き出す。私も会釈すると慌てて、彼を追った。
「上がって来い、待ってるぞ、か・・・。」
「えっ?」
「自分たちが負けるなんて、サラサラ思ってないと言うことだ。」
「キャプテン・・・。」
「舐められたもんだな。まぁ仕方ないが・・・。」
その後ろ姿を見送りながら、西くんが同行の木本みどりマネ-ジャ-に苦笑いで言っていたことは、当然わからなかったけど、でも私も
「凄い自信だね。」
と思わず哲に言ってしまっていた。
「自信はもちろんあるさ。でもその前に、俺は負けたくない、特にアイツらには。」
「哲・・・。」
「とにかく絶対に負けられねぇんだよ、俺。この夏だけは、絶対に・・・。」
真っすぐ前を向いたまま言った、哲の言葉の深い意味に、この時の私は気付く由もなかったんだ。
大会が始まったのは、それから1ヶ月後。絶対的本命視されている我が御崎高だけど、でも高校野球はトーナメント、一発勝負。だから何があっても不思議はない。油断は絶対に禁物なのだ。
それでも私たちは、危なげなく、勝ち進んで行った。シード校で2回戦からのスタ-トとなった我が校は、準々決勝まで全ての試合をコールド勝ち、つまり9回まで試合をせずに勝ち上がって行った。
その中心にいるのは、言うまでもなく、哲。全試合、1人でマウンドを守り、ほぼ、相手を寄せ付けない状況だった。その姿は、もはや神奈川の高校野球のレベルでは、完全に力が抜けて、凄みすら感じられる。私の目にも、そう映っていた。
準決勝は初めて9イニング戦ったけど、5-0の完封勝ち。
「あと1つ、明日も必ず勝つ。」
そう言った哲の表情は、自信に満ち溢れていた。
「西。」
哲が彼に呼び掛けていた。
「おぅ。」
振り返った西くんは、極めて自然に答えたけど、ふと横にいる私に気が付いたようで、軽く目礼してくれる。私も慌てて、頭を下げるけど、それ以上のコミュニケ-ションにはならない。中学時代は、もう少し普通に会話出来てたはずなんだけど・・・。
西くんと少し会話を交わした哲は
「明協とは別ヤマに入ったから、決勝まで行かないと当たらない。」
と言い出した。
「そういうことだな。」
「上がって来い、必ず。待ってるぞ。」
その言葉に、思わずハッと哲をみると、その表情は自信に満ち溢れていた。
「じゃ、またな。」
そう言い残すと、哲は西くんたちに背を向けて歩き出す。私も会釈すると慌てて、彼を追った。
「上がって来い、待ってるぞ、か・・・。」
「えっ?」
「自分たちが負けるなんて、サラサラ思ってないと言うことだ。」
「キャプテン・・・。」
「舐められたもんだな。まぁ仕方ないが・・・。」
その後ろ姿を見送りながら、西くんが同行の木本みどりマネ-ジャ-に苦笑いで言っていたことは、当然わからなかったけど、でも私も
「凄い自信だね。」
と思わず哲に言ってしまっていた。
「自信はもちろんあるさ。でもその前に、俺は負けたくない、特にアイツらには。」
「哲・・・。」
「とにかく絶対に負けられねぇんだよ、俺。この夏だけは、絶対に・・・。」
真っすぐ前を向いたまま言った、哲の言葉の深い意味に、この時の私は気付く由もなかったんだ。
大会が始まったのは、それから1ヶ月後。絶対的本命視されている我が御崎高だけど、でも高校野球はトーナメント、一発勝負。だから何があっても不思議はない。油断は絶対に禁物なのだ。
それでも私たちは、危なげなく、勝ち進んで行った。シード校で2回戦からのスタ-トとなった我が校は、準々決勝まで全ての試合をコールド勝ち、つまり9回まで試合をせずに勝ち上がって行った。
その中心にいるのは、言うまでもなく、哲。全試合、1人でマウンドを守り、ほぼ、相手を寄せ付けない状況だった。その姿は、もはや神奈川の高校野球のレベルでは、完全に力が抜けて、凄みすら感じられる。私の目にも、そう映っていた。
準決勝は初めて9イニング戦ったけど、5-0の完封勝ち。
「あと1つ、明日も必ず勝つ。」
そう言った哲の表情は、自信に満ち溢れていた。