With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
次の日、私はグラウンドにいた。もう来ないなんて言った、舌の根も乾かぬうちに、ノコノコと現れた私に、後輩たちは驚いていたけど、哲に話があると言われて、呼び出されたのだから、仕方がない。


メイングラウンドを後輩たちに譲って、サブグラウンドで汗を流している同級生たちをしばらく、眺めていた。


グラウンド狭しと駆け回る同級生たちの顔は本当に輝いていて。勝敗のプレッシャーから解放された今、彼らは純粋に野球をやることを楽しんでいるように見えた。


(みんな、本当に野球が好きなんだな・・・。)


改めて思った私は、ちょっぴり同級生たちを羨ましく思った。そんな彼らの今日の練習は、午前中で終了。


「なんだか知らないけど、松本の奴が、えらい張り切っててさ。全く、立ち直り早いよな、アイツ。」


航が近付いて来て、呆れ顔で言ってたけど、真実を知る私は、黙って聞いていた。


「おぅ、お待たせ。」


そこへ当の哲が登場。


「じゃ、お疲れ。先に寮に帰ってるから。」


航や他の部員たちが姿を消し、2人きりになると


「お前、なに勝手に1人で退部してんだよ。俺たちがまだ練習頑張ってるんだから、付き合えよ。」


いきなりの言葉が。


「冗談じゃないわよ。あんた達は進学や就職に野球が活かせるけど、私はそうじゃないんだから。いつまで、私に面倒見させれば気が済むのよ。」


と言い返してやると、私の反撃に、首をすくめる哲。


「まさか人を呼び出しといて、話ってこのことだったじゃないでしょうね?」


追い打ちをかけてやると


「そんなわけねぇだろ。」


答えた哲は、神妙に顔になって


「恵美、ありがとな。」


と私に頭を下げて来る。


「よかったじゃん。」


「ああ。お前がいなかったら、俺たち、絶対にダメだったから。」


「感謝しなさいよ。」


冗談めかして胸を張る私に、哲はもう1度頭を下げてくれる。
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