With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
「恵美。これまで、俺の我が儘に付き合ってくれてありがとう。本当に応援したい奴の側に居られなくて、辛かったと思う。」
「ちょっと待って。私は確かに、この3年間も西くんのことが好きだった。でもね、だからって明協と戦った時に、彼を応援したり、ましてウチのチ-ムに負けたり、あんたが打たれることを祈ったことなんて、ただの1度も、一瞬たりともないからね。」
「恵美・・・。」
「私は哲と一緒にこの学校に入って、一緒に野球部に入って、3年間マネ-ジャ-として、一緒に戦って来たことを誇りに思ってる。あんたにこの学校に誘ってもらったことを感謝してる。それだけは信じて欲しい。」
私は真っすぐに哲を見る。今言ったことは、まぎれもない私の本心なんだから・・・。
「ありがとう。俺はこんな素晴らしいマネ-ジャ-に3年間も支えてもらって、4度も甲子園に行けて、幸せなピッチャ-だよ。」
「哲・・・。」
彼も真っすぐに私を見て、そんなことを言ってくれるから、照れ臭くなって、思わず目をそらしてしまう。
「そして、大好きな人と結ばれる手伝いまでしてもらって。今度は俺が恵美にその恩を返す番だ。」
「えっ?」
「昨日、省吾に久しぶりに電話して聞いたんだ。西の奴、フリ-らしいぜ。」
そう言って、ニヤリと笑う哲。
「4番でキャプテンで、頭もよくて、かっこいいのに、なんで彼女いないのか、ずっと不思議だったって。」
「・・・。」
「心に決めた人がいるんなら、それも納得だって、アイツも笑ってたよ。」
「西くんにそんな人がいるとしても、それが私だなんて、全然限らないでしょ!」
動揺を隠せないで、思わず大きな声を出してしまった私に
「安心しろよ。3年間、離れてたけど、俺と西はずっとバッテリ-組んでたんだ。アイツのことは・・・今でも俺が一番わかってるよ。」
そう言って、哲はまたニヤリと笑った。
私が哲に引っ張られるように、明協高校を訪ねたのは、それから2日後のことだった。何しに来たと言わんばかりの、奇異な視線を向けられる中、西くんは、温和な笑顔を浮かべて、私たちを迎えてくれた。そんな長い時間は話せなかったけど、最後に西くんは
「甲子園では、君たちの分まで、精一杯戦って来るから、見ててくれ。そして、それが終わったら、五十嵐さんに聞いて欲しいことがあるんだ。よかったら、また会ってくれないかな。」
と言う言葉を私にくれた。
それからひと月後、まさかの哲が純ちゃんに贈った言葉と同じ言葉を、西くんから贈られた私が、夢中になって頷いてしまうことも、恋人同士になり、やがて夫婦になった2組のカップルが、ずっと仲睦まじく、家族ぐるみのお付き合いを続けて行くことになるのも、それはまた別のお話・・・。
[END]
「ちょっと待って。私は確かに、この3年間も西くんのことが好きだった。でもね、だからって明協と戦った時に、彼を応援したり、ましてウチのチ-ムに負けたり、あんたが打たれることを祈ったことなんて、ただの1度も、一瞬たりともないからね。」
「恵美・・・。」
「私は哲と一緒にこの学校に入って、一緒に野球部に入って、3年間マネ-ジャ-として、一緒に戦って来たことを誇りに思ってる。あんたにこの学校に誘ってもらったことを感謝してる。それだけは信じて欲しい。」
私は真っすぐに哲を見る。今言ったことは、まぎれもない私の本心なんだから・・・。
「ありがとう。俺はこんな素晴らしいマネ-ジャ-に3年間も支えてもらって、4度も甲子園に行けて、幸せなピッチャ-だよ。」
「哲・・・。」
彼も真っすぐに私を見て、そんなことを言ってくれるから、照れ臭くなって、思わず目をそらしてしまう。
「そして、大好きな人と結ばれる手伝いまでしてもらって。今度は俺が恵美にその恩を返す番だ。」
「えっ?」
「昨日、省吾に久しぶりに電話して聞いたんだ。西の奴、フリ-らしいぜ。」
そう言って、ニヤリと笑う哲。
「4番でキャプテンで、頭もよくて、かっこいいのに、なんで彼女いないのか、ずっと不思議だったって。」
「・・・。」
「心に決めた人がいるんなら、それも納得だって、アイツも笑ってたよ。」
「西くんにそんな人がいるとしても、それが私だなんて、全然限らないでしょ!」
動揺を隠せないで、思わず大きな声を出してしまった私に
「安心しろよ。3年間、離れてたけど、俺と西はずっとバッテリ-組んでたんだ。アイツのことは・・・今でも俺が一番わかってるよ。」
そう言って、哲はまたニヤリと笑った。
私が哲に引っ張られるように、明協高校を訪ねたのは、それから2日後のことだった。何しに来たと言わんばかりの、奇異な視線を向けられる中、西くんは、温和な笑顔を浮かべて、私たちを迎えてくれた。そんな長い時間は話せなかったけど、最後に西くんは
「甲子園では、君たちの分まで、精一杯戦って来るから、見ててくれ。そして、それが終わったら、五十嵐さんに聞いて欲しいことがあるんだ。よかったら、また会ってくれないかな。」
と言う言葉を私にくれた。
それからひと月後、まさかの哲が純ちゃんに贈った言葉と同じ言葉を、西くんから贈られた私が、夢中になって頷いてしまうことも、恋人同士になり、やがて夫婦になった2組のカップルが、ずっと仲睦まじく、家族ぐるみのお付き合いを続けて行くことになるのも、それはまた別のお話・・・。
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