With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
それから、今度は2年生の栗田昇(くりたのぼる)さん、片岡吾朗(かたおかごろう)さんという2人の先輩が、交代で私を備品室や用具室、部室の場所や内容について、これまた丁寧に説明してくれた。


「マネ-ジャ-業務は、今まで2年生の先輩が交代でなさってたんですか?」


「いや、3年生も含めて、とにかく選手全員で交代、分担してたんだ。」


「えっ、3年生もですか?」


「監督の方針でな。キャプテンだとかレギュラ-だとか、そんなの全く関係ないぞって。だから、俺達は全員マネ-ジャ-業務の内容も大変さも知ってる。安心して、何でも聞いてくれな。」


「はい、助かります。よろしくお願いします。」


そんな話をしてくれた栗田先輩も、もう1人の片岡先輩もみんな優しくて、真面目そうで、私はなんとなくホッとしていた。


こうして、ようやくオリエンテーションが終わると、私は片岡先輩とグラウンドに戻った。


「監督、一通り、話は終わりました。」


片岡先輩がそう声を掛けると


「ご苦労、じゃ片岡はポジションにつけ。」


「はい、じゃあな木本。」


「先輩、ありがとうございました!」


「おぅ、これからよろしくな。」


そう言うと、私にウインクして走っていく片岡先輩。私がビックリしていると


「吾朗の奴、早速みどりちゃんにアピ-ルしてやがる。」


と監督の横に立っている先輩が笑っている。


「よし、河井(かわい)は木本に代わってもらって、ポジションにつけ。」


「はい。あっ俺、2年の河井継雄(つぐお)。ポジションはレフトとあとファ-ストもやるんで、よろしく。」


「はい・・・。」


早速の先輩達のアピ-ル合戦に、私がキョトンとしていると、その様子を苦笑いで見ていた監督が


「木本、今は内野ノックの最中だ。ボ-ルを俺にトスしてくれ、出来るな。」


「はい!」


いよいよマネ-ジャ-としての初仕事だ。私は緊張しながらも張り切って返事をすると、河井先輩から受け取ったグラブを左手にはめた。
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