With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
備品庫まで一緒に歩きながら


「意外に真面目なんだね。」


そう言った私に


「みどりに少しでも早く俺のカッコいいとこ、見せてやりたいと思ってな。」


なんて、言うから途端にカチンと来る。もう前言撤回!


「あのね、さっきからみどり、みどりって馴れ馴れしく呼ばないでよ。彼氏でもないのに、いい加減にしてよね!」


思わずそう言ってしまうと


「俺は女を苗字やちゃん付けで呼ぶなんて、かったるいこと出来ねぇんだよ。」


また、かったるいだ。何がかったるいのか、よくわからないけど。


「それにどうせ、俺はお前の彼氏になるんだから。」


「はぁ?」


「少なくとも久保創よりは、俺の方が断然上だからな。あんな男で満足してるお前の目を覚まさせてやるから。」


「ちょっと、ふざけないでよ!私、別に久保くんと付き合ってないし。付き合ってないけど、あなたのようなチャラ男と久保くんを一緒にしないで。」


完全に頭に来た私は、備品庫からユニフォ-ムを出して、それを大宮康浩に突き出し


「じゃ、これ。サッサと着替えて、グラウンドに来てよ!」


と言い捨てると、あとは後ろを振り向きもしないで、グラウンドに戻って来てしまった。


「木本さん、どうしたの?」


戻ってきた私の顔は、完全に怒っていたのだろう。松本くんに聞かれたけど


「最低な奴が入部して来た。ホント、信じられない!」


プンプン怒っている私に、松本くんもなんて言っていいか、困っていると


「よし、始めるぞ。」


とキャプテンの声。その声に応えて、私達が所定の位置に付こうと動き出した横を


「さ、行くぜ。」


と颯爽と駆け抜けて行く人影。


「えっ?」


大宮くんだった。さっきまでとは一転して、ピシッと着こなしたユニホ-ム姿が結構凛々しくて、驚かされたのと


「アイツ、速いな・・・。」


松本くんが思わずつぶやいたように、その彼のスピ-ドに、私は目を見張った。
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