With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
翌日、私は憂鬱な気分のまま、D組へ。昨日、監督から指示された大宮康浩の身だしなみチェックをしなければならなかったから。


(マネージャーって、風紀委員の役目もしなきゃならないとは思わなかったな。)


実は、昨日は練習が終わった後に、さんざんアイツ・・・じゃなくて一応、大宮「くん」に、付きまとわれた。


これからどっか行こうだの、家はどの辺だとか、とにかくしつこいから


「君とは、グラウンド以外では一切、口をきく気はありませんから、そのつもりで。」


と宣言して、やっと振り切った。


ところが、監督の指示を思い出し、仕方なく彼のもとへ。よっぽど久保くんに付き合ってもらおうかとも思ったけど、それでまた何か言われて、久保くんに嫌な思いをさせたくもなかったので、1人で出向いた。


顔見知りもいないから、取り敢えず教室を覗いてみると


「おっ、マネージャー。早速のご来室か?やっぱり俺が気になってるんじゃねぇか。」


とあの忌まわしい声が、聞こえて来て、その方を見ると、類は友を呼ぶの言葉通り、いかにもチャラそうな面々と一緒にいる奴の姿が。


「いいから、恥ずかしがんないで、こっちに来いよ。」


ニヤニヤしながら、手招きしているアイツを見ると、本当に引き返したくなったが、これもマネージャーの仕事と、自分に言い聞かせ、教室に入った。


「康浩、確かにこりゃ、聞きしに勝る可愛さだな。お前、いい子、ゲットしたな。」


「だろ?じゃなきゃ、今更野球なんか、やらねぇよ。」


ちょっと、いつ私がコイツにゲットされたのよ、冗談じゃない!


「大宮くん、私は君にゲットされた覚えもないし、今後もゲットされるつもりもないんで。それに君はあくまで、仮入部でしょ?昨日の監督との約束は、どうなってるの?見たところ、何も変わってないみたいだけど。」


と頭に来て、厳しい口調で言うと


「あんなの、本気で言ってんの?あのオッサン。野球は服装やスタイルでやるもんじゃないよ。マネージャーも、昨日の俺のプレー見たろ?下らないこと言って、俺みたいな優秀な選手を腐らせない方がいいって、あんたからもオッサンに言っといてよ。」


監督の前では、結構殊勝な態度だったくせに、何コイツ。本当に最低だ。


「わかりました。では、そのように監督に報告します。大宮康浩には、入部の意思なしって。じゃ!」


私がそう言い放って、教室を出ようとすると


「おい、ちょっと待てよ。」


と言う声が、聞こえて来た。
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