With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
ここでは、これから野球部が練習を始める。


私も久保くんも、明協に入ったのは、家から徒歩で通学できるとか自分のレベルに合ってるとかはもちろんあったけど、何より私達はここで野球がやりたかったんだ。


久保くんは小学校4年生から野球を始め、中学でも野球部で頑張っていた。


私は・・・女子だから、プレ-はほとんどしたことないけど、野球を見るのは大好き。私と久保くんが仲良くなったもう1つの大きな理由が野球だった。


やがて、三々五々先輩たちが集まり出して来て、監督も姿を現し、練習が始まった。


「いよいよ硬式球だね。」


野球で使うボ-ルは2種類ある。中学生までは身体に当たっても、大きなケガにはなりにくい軟式球。だけど高校からは、プロ野球でも使われる硬式球。


硬さはもちろん、重さも違うこの2つのボールは、まさに「似て非なる物」で、プレ-する立場からすると、世界が変わるくらいの違いなんだそうだ。


「とにかく全然感覚が違うからね。まずは慣れないと。」


そんなことを話しながら、グラウンドに視線を注いでいると


「あっ、見て。」


私が思わず指差してしまった先には、ピッチャ-が投球練習をするブルペンという場所が。そこに1人の選手が姿を現したのだ。


その瞬間、私達と同じようにグラウンドを取り巻いていた女子の間から歓声が上がる。


でも、その歓声にも、特に動じることもなく、マウンドに立ったその選手は、肩慣らしのキャッチボールを何球か行うと、相手のキャッチャ-を座らせた。


大きく振りかぶってから投げ下ろしたその球は、あっという間に、キャッチャ-ミットに快音を響かせて収まった。


その瞬間、グラウンド・・・ううん、彼を取り巻いている女子から、また黄色い歓声が上がった。
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