With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
私と松本くんは、なんとも言えない雰囲気を引きずって、引き返す羽目になった。


待っていた久保くんと白鳥くんに顛末を報告すると


「なに、そいつ?今どき、そんな偏見持ってる奴、いるんだ。」


と温厚な久保くんが怒り出した。


「ミッチャンが、どんなに野球が好きで、野球に情熱を傾けて頑張ってるか、ちょっと見ればわかるじゃないか。こんな言い方は、よくないかもしれないけど、もしもミッチャンが男子だったら、僕なんか逆立ちしたって敵わない選手になったに違いないんだよ。それを・・・。」


興奮して、まくしたてるような久保くんに


「いろんな考えの人がいるからね。私は気にしてないし。」


と私が逆になだめるように言う。


「それにしても、これで1年は俺達4人だけが確定しちゃったわけか・・・。」


とため息をつきながら言った白鳥くんの言葉に


「そう言うことに・・・なっちゃうね。」


と久保くんも応じて、場の空気が重くなる。仕方ないよね、と私も思ったがふと


「そう言えば、松本くん・・・。」


佐藤博がさっき変なことを言っていたのを思い出して、私が声を掛けると、ちょうど午後の授業開始のチャイムが鳴り


「じゃ、また後で。」


クラスの違う白鳥くんが、そう言って離れ、私達も教室に戻った。


そして放課後、私はいつものように選手達より一足先にグラウンドに行くと準備に入る。例によってポリタンクを運ぼうとしていると


「重そうだな。」


と聞き覚えのある声と言葉が。ハッとして振り向くと


「俺も持つよ。」


と言った彼は、ユニフォームに身を包み、頭髪はさっぱりとした、スポーツマンらしいそれになっていた。


私が言葉を失っていると


「何してるんだよ、行こうぜ。」


そう言って、グラウンドへ向かって歩き出した大宮くんを見て、私は慌てて後に続く。


思いもしなかった大宮康浩の登場に、私が何を言っていいか分からずに、彼の少し後を歩いていると


「野球、そんなに好きなのかよ。」


「えっ?」


前を向いたまま、大宮康浩が言って来る。


「野球なんかに、そんなに夢中になれるお前達が理解出来ねぇんだ。」


「・・・。」


「お前達に好きだけじゃ、どうにもなんねぇことがあることを教えてやろうと思ってな。だから、本気の俺を見せてやる。」


「・・・。」


「楽しみにしてろよ。」


そう言いながら、大宮康浩は私を振り返った。
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