With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
大宮くん、佐藤くんの姿を見て、後から来た松本くんや白鳥くんは驚いて私に


「どうしたの?アイツら。」


と尋ねてくる。


「知らないよ。2人とも気が変わったんだって。」


「フ~ン。まぁ、何にせよ、1年が増えるのは悪い話じゃない。」


なんて白鳥くんは言ってる。


先輩達も揃って、練習スタ-ト。


「佐藤、アップ先頭だ。」


「はい。」


キャプテンの指名で、佐藤博が先頭でランニングスタ-ト。


「ファイト~、1、2!」


佐藤くんの声はなかなかのボリュ-ム。先頭の声出しって、結構大切なものだって、私も見ていて分かってきた。


アップが終わり、ピッチャ-とキャッチャ-、いわゆるバッテリ-と呼ばれるチ-ムはブルペンに。他の野手は、各ポジションについて、守備練習。注目の新入り、大宮康浩は一回練習に参加したことがあって、外野のセンタ-が守備位置であることは知っていたけど、さて佐藤博はどこなんだろうと見ていると、同じく外野の一角であるライトのポジションについた。


「お願いします。」


佐藤くんの声がグラウンドに響く。監督が放った飛球を、まずは難なくキャッチした佐藤くんは、チラリとこちらを見たかと思うと、いきなり私目がけて、返球をダイレクトに返して来た。


(えっ?・・・)


ノッカ-補助に入っていた私。ある程度のスピ-ドなら、対応できるんだけど、外野からの全力投球はちょっと無理。それもなかなかのいいコントロ-ルで、私に向かって、真っすぐボ-ルが伸びてくる。


「キャッ!」


思わず悲鳴を上げて、ボールから逃げてしまった。


「何やってんだよ、ストライク返球じゃねぇか。ちゃんと取れよ!」


ライトのポジションからそう怒声を放って来た佐藤博に


「お前こそ、マネ-ジャ-相手にあんな全力の返球して、何考えてるんだよ。だいたいノックの返球はカットマンである俺に返せ。」


ファ-ストのポジションにいた3年生の澤田(さわだ)さんが、そう言い返すと


「チッ。ボ-ルも満足に取れねぇくせに、グラウンドでチャラチャラしてんじゃねぇよ。」


そんな悪態をついて、佐藤博はこちらに背を向ける。


「大丈夫?」


そこへ、私が取り損ねたボ-ルを拾った松本くんが、私に近づいて来る。


「ごめんね、松本くん。」


「いいんだ。いくらなんでも、あんな送球、木本さんに捕れるわけないよ。」


「よっぽど、私が目障りなんだね。」


「困った奴だ。でも・・・。」


「えっ?」


「いい肩してる。」


そう言った松本くんは、チラリとライトに視線を向けると、ポジションに戻って行った。
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