With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
「腹減ったなぁ。」


その日の帰り、校門に向かう途中で、白鳥くんがこんなことを言い出した。


「確かに。」


そう応じた松本くんに


「ちょっとコンビニ寄ってかねぇ?」


と誘いをかける白鳥くん。


「そうすっか。」


「僕も乗った。」


松本くんと久保くん、更には私も全く異論がなく、4人で歩き出すと


「お先に。」


と私達を追い越しながら、佐藤博が声を掛けて来る。


「佐藤、お前も一緒に行かないか?コンビニ。」


そう誘った白鳥くんに


「パス。俺は仲良しこよしの部活なんか、求めてねぇんでな。それにコンビニの添加物まみれの飯、食うくらいなら、一刻も早く帰って、愛情こもったおふくろの手料理食うよ。じゃあな。」


佐藤くんは歩く足を止めることも、振り返ることもなくそう言うと、そのままスタスタと歩き去って行く。


「なんか腹立つよね、あの男。」


中学時代からの付き合いだけど、久保くんがこんなことを言うのは、聞いたことがない。


「野球が好きなんだろうけど、あんな意固地な性格じゃ、チ-ムプレ-である野球には向いてないんじゃないの、アイツ。」


白鳥くんが相槌を打つようにそう応じる。


「でもアイツ、なんで急に野球部に入って来たんだろう?」


久保くんの疑問は、私達全員の疑問。


「気が変わったって、言ってたけど・・・。」


そう言った私の言葉に


「なんか見返してやりたい奴が出来たらしいぜ。」


と後ろから答える声がして、みんな驚いて振り返るとそこには大宮康浩の姿が。


「大宮くん・・・。」


「それって誰だ?木本さん?」


「さぁ、誰だかは知らねぇけどさ。なんかそんなことを言ってたぜ。」


白鳥くんの問いにそう答えた大宮康浩は


「俺、アイツのこと、中学の時から知ってるが、あの鉄砲肩と勝負強いバッティングはなかなかのもんだぜ。」


と言うと、私に視線を向けた。


「それに俺とは真逆の女嫌い。まぁ、あの性格じゃ、女子に好かれるわけないけどな。」


「・・・。」


「ただ、野球に対する情熱は、だてじゃない。野球を愛してるみどりとなら、話は合うはずだぜ。まぁ、アイツをどうやって、チ-ムの輪の中に巻き込んで行くか、まずはマネージャーのお手並み拝見だな。」


そう言うと


「あ、そうそう、今更だけど大宮です。俺はとりあえず野球、真面目にやるって決めたから。誰かさんに言われっぱなしで、引っ込んでられねぇんで。と言うことでみなさん、よろしく。じゃあな、マネージャー。」


そう言うと、大宮康浩はニヤッと笑うと、私達に背を向けて歩き出した。


「あの2人、木本さんを意識し過ぎ。」


「そうだよ、ミッチャンは敵じゃないんだからさ。」


呆れ気味に言う白鳥くんや久保くんの横で


「でも、アイツらには野球選手としての武器がある。羨ましいよ。」


そうポツンと呟いた松本くんの横顔を、私は思わず見てしまった。
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