With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
そして、その週末から監督の予告通り、予選大会に向けた対外練習試合が始まった。朝、学校に集合して、バスで目的地に出発。今日の相手、東海高校へは1時間ほどの道のり。


GWにあった私にとっての初めての練習試合は、こちらがホスト校で、いろいろ準備があって大変だったけど、今回はビジタ-なので、やや気が楽。それでも現地に着けば、まずはコンビニに走って、氷(冷水作りにはもちろん、選手のアイシングにも使う必需品)の確保、相手校のマネ-ジャ-さんや今日の審判さんへの挨拶回りなど、のんびりしている暇はない。


例によって、バタバタと走り回っていると


「みどりじゃねぇか。」


という声がして、ハッと足を止めた。誰?と思って振り向くと


「久しぶり。」


そう言ってニヤニヤしながら、こちらを見ている男子が。記憶よりはかなり大人びていたが、見覚えのある顔だ。


小林(こばやし)くん・・・。」


「へぇ・・・お前、明協のマネ-ジャ-になったんだ?」


そう言いながら、近づいて来る小林くん。


「しばらく見ない間に、いい女になったなぁ。」


高校生のくせに、セクハラ親父みたいなことを口にする彼に、返事をする気もせずに黙っていると


「こんな所にいた。」


と今度は聞き覚えのある女子の声が。


「ま・・・小林くん、なにこんな所で油売ってるの?もうすぐミーティングなんだから、行くよ。」


呆れ顔で近付いて来て、小林くんの腕を引っ張る彼女の手を、乱暴に振り払うと


「うるせぇな、わかってるよ。なぁみどり、今日俺先発するから。バッタバッタ三振取って、惚れさせてやるから、よく見とけよ。」


私になにやらアピ-ルしてくるから


「勘違いしないで。私と君は敵同士なんで、味方がバッタバッタ三振取られたら、頭来るだけなんだけど。」


と言ってやると


「そりゃ悪ぃな。でもそれが力の違いって奴だからな。」


ニヤニヤ顔のままで言い募って来る。


「もうわかったから、行くよ。みどり、ごめんね、忙しい時間に。」


そう言いながら、小林くんを引っ張る彼女を


「ユッコ、じゃ後でね。」


同情のまなざしで見ながら、声を掛けた。


(相変わらず、ユッコも大変そう。彼の面倒見るのは・・・。)


そう言えば、ウチにも似たようなキャラがいたな、なんて思いながら。
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