With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
ふと横に視線を向けると、我が校の切り込み隊長大宮くんが、緊張した様子で、小林くんの投球を見つめている。


「大宮くん、しっかり。」


声を掛けると


「お、おう・・・。」


なにやら元気のない返事。さすがに高校初の実戦に固くなっているのだろうか。やがて、相手校のマネージャ-のアナウンスに促されるように左バッタ-ボックスに立った大宮くん。彼とはいろいろあったけど、最近は普通に話せるようになったし、なんと言っても同級生の初打席。


「ファイト!」


声援を送るけど、小林雅則は遠慮会釈なく、練習より更にスピ-ドの増した速球を投げ込んで来る。アッと言う間に追い込まれた大宮くんは3球目のボ-ルをあえなく空振りして3球三振。いつもの自信満々の態度はすっかり影を潜め、とぼとぼと引き上げてくる大宮くんの姿にやや唖然としていると、続く東尾さん、星さんの3年生コンビも打ち取られ、あっさりとチェンジ。


「よし、しまって行こう。」


キャプテンの声に、守備位置に走るナインたちを見送っていると


「さすが神奈川三羽ガラスと言われるだけのことはある。いいボール投げるなぁ。」


なんて言いながら、白鳥くんがスコアを付けている私の横に座って来る。


「何、他人事みたいに言ってるの?白鳥くんもそのひとりでしょ。」


私が思わず言うと


「らしいな。でもあっちは背番号1付けてるってことは、1年生ながらエースってことだろ。その点、僕は背番号10、あくまで2番手だからね。格が違うよ。」


なんて言って、呑気に笑っている。


「それより、木本さん、アイツと知り合いなの?」


「えっ?」


「試合前、なんか話してたじゃん。」


どうやら、あのやり取りを白鳥くんはどこかで見ていたらしい。


「うん・・・小林くんとは小学校が一緒だったんだ。5、6年の時はクラスも一緒だった。」


「へぇ。」


「当時から、彼は地元の野球チームで鳴らしててね。友だちに誘われて何回か試合を見に行ったこともある。でも中学に上がる時に彼は中高一貫校である東海にスカウトされて、別々の学校になったから、今日は本当に久しぶりに会ったんだ。」


「そうなんだ。だからアイツ、いつもにも増して、気合入ってるんだ。」


「どういうこと?」


「木本さんにいいとこ、見せたいと思って。」


「えっ、そんなことないよ。」


白鳥くんの言葉に、慌ててそう答えたながら、私は思わず相手ベンチに座っているユッコを見てしまった。
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