With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
場の雰囲気がちょっと暗くなりかけたところで
「とは言え、ウチの部を見ても、勉強はからっきしっていう奴もまだまだ多い。だから、そんなに落ち込むな、博。それに俺達には強い味方が目の前に2人もいる。」
とここまで静かだった大宮くんが口を開いた。
「味方?」
「ああ。」
頷いて、私と久保くんの顔を交互に見た大宮くんは
「みどり、創、俺達に勉強教えてくれ。別にお前達みたいに、学年ベスト10に入れるとは思ってないが、せめて赤点は回避できるくらいにはなりたいんだ。頼む。」
そう言って頭を下げる大宮くんに
「そうか、その手があったか。」
松本くんはパッと表情を明るくして
「木本大明神、創守護神様。どうか迷える男子高校生4名をお救い下さいませ。」
佐藤くんが例によって、大袈裟なしぐさで冗談半分だけど、私たちを拝み出すに至って、私と久保くんは思わず顔を見合わせる。
「いや冗談抜きで2人とも頼む。場所は俺んち提供してもいい、おふくろに甘い菓子用意させるから。」
最後に白鳥くんに「みどりを落とすには刃物はいらぬ、ただスイ-ツで釣ればいい」という弱点を見事につかれて
「みんながここまで頼むんだから、やろうよ。」
と私はあえなく陥落し
「わかった。じゃ、早速明日からだよ。」
久保くんが笑顔で続けて、ここに私たちの卒業まで続くことになる「野球部試験対策勉強会」が発足することになった。
そして迎えた次の日。授業が終わり、自転車で30分かかるとされる白鳥家に、遠回りにはなるけど、電車で向かおうと駅に歩き出そうとする私たちの前に、なにやら厳かな黒塗りの車が静かに止まった。何事かと固まっていると、運転席から1人の紳士が降り立って来た。
「坊ちゃん、お待たせしました。」
「いえ、僕たちも今来たところです。時間ピッタリですよ。」
うやうやしく声を掛けられて、笑顔で答えた白鳥くんは
「じゃ、みんな乗ってくれよ。」
私たちに声を掛ける。ここでこの車は、白鳥家から差し向けられた迎えの車であることに気付いたけど、乗ってくれよとあっさり言われても・・・。私たちが躊躇い、戸惑っていると
「ぐずぐずしてたら、せっかくの勉強の時間がどんどん少なくなっちまうぜ。さ、急いで。」
私たちに言うと、白鳥くんはサッサと乗り込んでしまう。尚も顔を見合わせていた私たちだけど、帰宅の途についている他の生徒からの視線に居たたまれなくもなって来て
「では、失礼します・・・。」
恐る恐るといった風情で、車の中に入った。高校生6人を難なく収容でき、普通の自家用車とは比べ物にならない静かな乗り心地に言葉を失いながら、10分ほど。車は周辺の家とは明らかに一線を画したお屋敷というか大邸宅に到着。
「お疲れ様でした。」
社長(つまり白鳥くんのお父さん)付運転手の椎名さんと、ここに来る途中に自己紹介してくれた紳士が、笑顔でドアを開けてくれた。
「とは言え、ウチの部を見ても、勉強はからっきしっていう奴もまだまだ多い。だから、そんなに落ち込むな、博。それに俺達には強い味方が目の前に2人もいる。」
とここまで静かだった大宮くんが口を開いた。
「味方?」
「ああ。」
頷いて、私と久保くんの顔を交互に見た大宮くんは
「みどり、創、俺達に勉強教えてくれ。別にお前達みたいに、学年ベスト10に入れるとは思ってないが、せめて赤点は回避できるくらいにはなりたいんだ。頼む。」
そう言って頭を下げる大宮くんに
「そうか、その手があったか。」
松本くんはパッと表情を明るくして
「木本大明神、創守護神様。どうか迷える男子高校生4名をお救い下さいませ。」
佐藤くんが例によって、大袈裟なしぐさで冗談半分だけど、私たちを拝み出すに至って、私と久保くんは思わず顔を見合わせる。
「いや冗談抜きで2人とも頼む。場所は俺んち提供してもいい、おふくろに甘い菓子用意させるから。」
最後に白鳥くんに「みどりを落とすには刃物はいらぬ、ただスイ-ツで釣ればいい」という弱点を見事につかれて
「みんながここまで頼むんだから、やろうよ。」
と私はあえなく陥落し
「わかった。じゃ、早速明日からだよ。」
久保くんが笑顔で続けて、ここに私たちの卒業まで続くことになる「野球部試験対策勉強会」が発足することになった。
そして迎えた次の日。授業が終わり、自転車で30分かかるとされる白鳥家に、遠回りにはなるけど、電車で向かおうと駅に歩き出そうとする私たちの前に、なにやら厳かな黒塗りの車が静かに止まった。何事かと固まっていると、運転席から1人の紳士が降り立って来た。
「坊ちゃん、お待たせしました。」
「いえ、僕たちも今来たところです。時間ピッタリですよ。」
うやうやしく声を掛けられて、笑顔で答えた白鳥くんは
「じゃ、みんな乗ってくれよ。」
私たちに声を掛ける。ここでこの車は、白鳥家から差し向けられた迎えの車であることに気付いたけど、乗ってくれよとあっさり言われても・・・。私たちが躊躇い、戸惑っていると
「ぐずぐずしてたら、せっかくの勉強の時間がどんどん少なくなっちまうぜ。さ、急いで。」
私たちに言うと、白鳥くんはサッサと乗り込んでしまう。尚も顔を見合わせていた私たちだけど、帰宅の途についている他の生徒からの視線に居たたまれなくもなって来て
「では、失礼します・・・。」
恐る恐るといった風情で、車の中に入った。高校生6人を難なく収容でき、普通の自家用車とは比べ物にならない静かな乗り心地に言葉を失いながら、10分ほど。車は周辺の家とは明らかに一線を画したお屋敷というか大邸宅に到着。
「お疲れ様でした。」
社長(つまり白鳥くんのお父さん)付運転手の椎名さんと、ここに来る途中に自己紹介してくれた紳士が、笑顔でドアを開けてくれた。