With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
4日後、明協高校は初戦(ただしウチの高校はシード校なので、2回戦)を迎えた。グラウンドに散った選手達を見送りながら、私は


(いよいよ始まるんだ・・・。)


胸の高まりを抑えられずにいた。


「緊張してるか、木本?」


隣の監督から声を掛けられて


「はい。」


私は素直に頷いた。


「俺もだ。」


「えっ?」


監督の言葉に、思わず驚く。


「監督としても、選手としても、何度経験したかわからんくらいだが、でも試合が始まる前はやっぱり緊張するもんだ。もしこの試合前の緊張というかドキドキを失ったら、それは野球を辞める時だ。俺はそう思っている。」


「監督・・・。」


「さぁ試合開始だ。木本、頼んだぞ。」


そう言って、真っ直ぐに私を見た監督に


「はい!」


私は力強く頷いていた。


そして、球審からの合図で、両軍選手がいっせいに飛び出し、ホームベ-スを挟んで、一列に相対する。


「これより明協高校対本牧学園高校の試合を開始します。」


球審の言葉を受けて


「よろしくお願いします!」


選手たちが挨拶を交わす。同時にベンチに残っている監督と私も、相手校のベンチの監督、マネ-ジャ-とそれぞれ目礼を交わす。そして場内アナウンスの選手紹介の声に合わせて、今日は後攻と決まったウチの選手達が、それぞれのポジションに向かう。


ピッチャ-星(3年) キャッチャ-西(3年) ファースト澤田(3年) セカンド片岡(2年) サード後藤(3年) ショ-ト栗田(2年) レフト河井(2年) センタ-大宮(1年) ライト東尾(3年) 監督が選んだレギュラ-は3年生が5人で最多だけど、2年生が3人、1年生が1人入っていて、他校に比べて若い布陣だ。


「プレイボール!」


球審の声で、試合が始まる、キャプテンの出すサインに大きく頷いた星さんがゆっくり振りかぶると、力一杯のボールを投げ込んで行く。それは小気味よい音と共にキャプテンのミットに納まる。


「ストライク!」


主審が右手を上げてコールすると


「ナイスボ-ル!」


私はベンチの選手達と一緒に星さんに拍手を送ると、スコアブックに見逃しストライクを示す◎を書き込んだ。
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