With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
「白鳥、準備しろ。」


監督の指示が飛ぶ。


「はい。」


頷いた白鳥くんに


「白鳥くん。」


「徹。」


私たちベンチにいる1年生が声を掛ける。


「行って来る。」


私たちにも、1つ頷いて見せて、白鳥くんは村井さんを伴って、ブルペンに走る。白鳥くんの登場に、ウチの応援席から歓声と黄色い悲鳴のような声援が上がる。


(相変わらず、凄い人気・・・。)


思わずそう思いながら、ふとマウンドに目をやると、苦しそうにしていた星さんの表情が、キリッと締まった。


「白鳥がいくらいいピッチャ-でも、1年生の手を借りるのは、3年生のプライドが許さんってか。星さんの表情が変わったぜ。」


佐藤くんの言葉に、私が頷く。結局、星さんは後続をキッチリ抑えて、この回のピンチを退ける。


「白鳥くん効果には、こんなのもあるんだね。」


「全くだな。」


私の言葉に、佐藤くんは笑う。今度はこちらの番、1番の松本くんからの好打順。


「この回で決めよう。」


キャプテンの声がベンチに響く。すると


「ミッチャン。」


私を呼ぶ声がベンチ裏から。振り返ると、ベンチから外れている久保くんが手招きしている。


「どうしたの?」


私が近付くと


「実は・・・。」


と耳打ちして来る久保くん。


「OK。」


私は頷いて、ベンチに戻ると、今度は監督に今の久保くんとの話を伝える。1つ頷いた監督は


「松本。」


打席に向かおうとする松本くんを呼び止める。


「はい。」


振り返った松本くんに、監督が短く指示を伝える。


「わかりました。」


1つ頷いた松本くんは、緊張の面持ちで左打席に立った。


初回に1点こそ失ったものの、それ以降は要所を締め、ウチに得点を許さないで来た相手のエース。これ以上の失点は絶対に出来ないと、まなじりを決している。振りかぶり、第1球を投じると、松本くんのバットが一閃。痛烈な打球がレフト線に飛ぶが、惜しくもファール。


「惜しい!」


私も思わず声が出る。


「もう少しだった。」


佐藤くんも悔しそうにつぶやく。


「でも創の言った通りだったじゃないか。」


いつの間にか、私たちの横にいる大宮くんが言う。実は久保くんはベンチ裏でパソコンを使って、相手ピッチャ-の投球を分析していて、回の先頭打者の特に初球は、圧倒的に外角の変化球が多いということを見抜いた彼が私を通じて、監督に報告。それを受けて、監督が松本くんに


「少々ボール気味でも構わないから、初球を狙って行け。」


と指示したのだ。
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