With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
「先輩たちにいろいろバカにされてるのも知ってるけど、今はまだ準備が整ってないからさ。でもね、ミッチャン。これは、はっきり言っておくけど、僕も2年生には負けるつもりないから。」


そう言って、ニコリと微笑む久保くんに


「よかった、それでこそ久保くんだよ。」


私もホッとしたように笑顔になる。


「だから、君の仕事を増やすようで申し訳ないけど、データ分析はいずれ、ミッチャンがメインでやってもらうことになるから、よろしくね。」


「任せなさい!」


久保くんに心配掛けないように、力強く答える。そう、久保くんはやっぱりサブマネージャーじゃなくて選手として、やってくべき人なんだから。


そうこうしてるうちに、グラウンドに到着。松本くんたちの練習はまだ続いている。


汗びっしょりになっている2人。その様子を、私たちは見つめる。


「じゃ、ラストだ。」


佐藤くんが声を掛けると


「おぅ!」


松本くんが頷いた。そして、最後の1球、佐藤くんが渾身の力で投げ込んで来たボールを完璧に捉える。


金属バット特有の音と共に、放たれた打球は、弾丸ライナーというしかない勢いでライトのフェンスを超えて行く。


「ウヘェ・・・。」


それを見て、半分感心、半分呆れたように声が出る久保くん。


「さっきより、更に勢いが増してる・・・。」


私も言葉を失う。


「佐藤、ありがとう。」


「飛ばすことに掛けては、俺もそれなりに自信があったけど、お前、スゲエな。」


「今日はなんか調子よかった。自分でもびっくりだよ。」


そんな会話を交わしている松本くんたちを、少し眺めていると


「とうとうお目覚めかな?」


と久保くんの声。


「えっ?」


「今はテッチャンだけが注目を浴びてるけど、ひょっとしたら、僕たちはとんでもないプレーヤーとチ-ムメイトなのかもしれない・・・。」


「久保くん・・・。」


「これは・・・凄いことになるかもしれないよ。」


「うん・・・。」


久保くんの言葉に頷いた私に気が付いた松本くんが


「あっ木本さん、終わったよ。ありがとう。」


と笑顔で声を掛けて来る。


その笑顔に私の胸が、思わずドクンと跳ねた。
< 92 / 200 >

この作品をシェア

pagetop