With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
今までの相手を決して舐めていたわけではないけど、私たちが普通の力を出せれば、2回戦、3回戦は突破できるし、しなきゃいけないと思っていた。そして、トーナメント表を見た時点で、4回戦で恐らく東海とぶつかることになり、そこがまず事実上の第一関門になるであろうことは、予測はついていた。


そしてここを突破できれば、ベスト8に進出、第一目標である「ハマスタに帰る。」が実現出来る。けど、この前の練習試合で、東海には完敗している。


「ここまで、東海は危なげなく勝ち上がって来ています。エースの小林くんは、先が長い県予選を見据えてか、まだ無理をせず、あまり変化球を交えた投球はしてませんが、それでもここまでほぼ相手を寄せ付けない完璧なピッチングをしています。攻略は正直容易ではないと思います。」


翌日の練習前、4回戦に向けてのミーティングが開かれ、現在データ担当の久保くんが、監督の指名を受けて、こう発言した。


「今、久保からもあったように、小林は1年生だが、今大会5本の指に入る好投手であることは間違いないし、現にウチはこの前の練習試合で、ほぼ完璧に抑えられている。難敵ではあるが、しかし、あの時はこちらも新チ-ム発足に向けての試行錯誤の時期だったし、1度とは言え、彼のボールを実戦で見ているというメリットは大きい。具体的な指示は、改めて出すが、侮ることなど出来るはずもないが、必要以上に臆することもない。各自がそれぞれの役割を果たし、力を発揮すれば、勝てる。俺はそう確信している。」


監督の力強い言葉に、選手達は頷いている。


「話は以上だ。試合の間隔がだんだん詰まって来るから、各自オーバ-ワ-クにならないように充分注意しろ。」


その言葉を受けて、私たちはグラウンドに。


まだ午前中だけど、既に太陽は燦燦と私たちに容赦なく照り付けてくる。選手達はウォ-ミングアップに入り、私はそれを監督の横で見守る。


「木本、大丈夫か?」


そんな声が聞こえて来て、私は監督を振り向く。


「暑いだろう。」


「はい・・・でも選手のことを考えれば、そんなことは言ってられません。」


私が答えると


「山下と同じことを言うな。」


監督は一瞬笑みを漏らしたが


「その気持ちはありがたいが、健康管理が大切なのは、選手だけじゃない。無理だけは絶対にしないでくれ。」


私の顔を見て言ってくれた。


「はい、ありがとうございます。」


と答えた私は、また視線をグラウンドに戻した。
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