秘密の出産をするはずが、エリート外科医に赤ちゃんごと包み愛されています
胸を撃ち抜かれたような衝撃が走った。どこまで俺を夢中にさせる気なんだ。
もう絶対に諦めてやれない。いや、そんなつもりもないのだが、杏奈を誰にも渡したくない。
「私は、三井先生とは釣り合わないと思います。だから……」
「そんなことは気にしなくていい」
「いえ、そういうわけにはいきません」
「杏奈」
「ごめんなさい。帰ってください」
かすかに震えていた声は、次第にはっきりと強い意思を帯びたものに変わっていった。
俺の腕を振りほどくと顔を背けて、もう出ていってくれと言っているかのよう。
杏奈はどうしても俺を受け入れる気はないらしい。
どう言えばわかってくれるというんだ。諦める気はないが、嫌われたくもない。産後で体力を消耗しているだろうし、ここは一旦引き下がった方がいいのかもしれない。
「今日はこれくらいにしておく。また明日くるから、ゆっくり休んでくれ」
「ふぇ……ふぇーん」
帰ろうとすると、それまで気持ちよさそうに寝ていた娘が突然声を上げて泣き出した。
顔を真っ赤にしながら大粒の涙を流し、全力で何かを訴えてくる。
「よしよし、いい子だからな」
そんな娘の涙を指先で拭ってやる。