秘密の出産をするはずが、エリート外科医に赤ちゃんごと包み愛されています
手足をジタバタ動かして、都合のいい解釈かもしれないが、俺が帰るのを引き止めているように見える。
手のひらに人差し指を置くと、小さな手でギュッと握り返してきた。
ああ、どれだけ可愛いんだ。
きみを手放したくはない。
そのために頑張れと言ってくれているのか。
「杏奈、やはり最後まで話をさせてくれ。この子もそれを望んでいるんじゃないか?」
心配そうにコットの中を見つめる杏奈に、まっすぐな目を向ける。
「三井先生はずるいです。そんな風に言われたら、断れないのに……」
「それはすまないと思っている。でも俺は真剣なんだ。今すぐにでも杏奈を俺のものにしたくてたまらない」
「ほら、ずるい。またさらっとそんな発言を」
杏奈は両手で顔を覆うと、うつむいてしまった。顔だけではなく、耳の縁までもが真っ赤だ。
そんな杏奈に目を丸くする。
「だから嫌なんです。三井先生といると冷静じゃいられなくなる。気持ちがどんどんあふれて止まらなくなるんです」
「気持ち? それはぜひちゃんと聞いておきたい」
「だめ、です。言いたくありません」
「どうしてだ」
「……」
やはりだめなのか。
これ以上何を言っても響かないのだろうか。