秘密の出産をするはずが、エリート外科医に赤ちゃんごと包み愛されています
「もう、だめです」
抱きしめている体から力が抜けていくのを感じた。火照った顔からは湯気が出そうで、だんだんと目が潤んでいく。
自惚れではないんだよな。杏奈も俺と同じ気持ちでいてくれたことが夢みたいで未だに信じられない。
「もう離さない。一刻も早く入籍して一緒になろう」
「にゅ、入籍?」
杏奈が目を白黒させた。
「展開が早すぎて追いつかないです」
キャパオーバーだとでも言いたげな杏奈の体が硬直する。
「すまない。肝心なことを言い忘れていた」
俺は杏奈の手を取り困惑するその瞳を直視する。目が合うと頬を紅潮させながら、恥ずかしそうにうつむく杏奈。
だがすぐに顔を上げ、俺の目を見つめ返してきた。
不安そうに揺れる瞳。また抱きしめたい衝動に駆られたが、なんとか我慢した。
「必ず幸せにすると誓うから、俺と結婚してくれないか?」
杏奈はとうとう瞬きさえもしなくなった。大きな瞳を左右に揺らし、動揺している。
「始まりはあんな形だったかもしれないが、俺は本気だ」
「どうして私なんでしょうか?」
しばらくすると杏奈がためらいがちに口を開いた。
「すみません、三井先生のお気持ちを疑っているわけではないのですが、自分でもまだ信じられなくて」