秘密の出産をするはずが、エリート外科医に赤ちゃんごと包み愛されています

「あの小さかった若先生が、こんなに大きくなってまぁ」

「懐かしいわねぇ」

「あ、あの?」

一人状況を飲み込めないでいる私に、関根院長がようやく気づいた。

「おや、まだ話していなかったんですか?」

「昨日はそれどころではなかったんですよ」

「ほう、そうでしたか。宏太が今ここにいるということは、うまくいったんでしょう?」

「ええ、まぁ。杏奈、実はこの町は俺の母親の地元なんだ。関根医院の院長は俺の祖父で、俺はこの産院で生まれたんだよ」

会話の流れからそんな気はしていた。だけどこんなことってあるのだろうか。

私がこの町にきたのも、関根医院で働くことにしたのも偶然。

たまたまそこが三井先生の地元で関根院長が三井先生の祖父だなんて。そんな偶然があるのだろうか。

「一つだけ芹沢さんに謝らなければなりません」

「は、はい?」

「偶然井田さんとの会話を聞いてしまい、芹沢さんのことを宏太に話したのは私です」

「あ」

そういうことだったのか。

だから三井先生はここにきたというわけか。

「プライベートなことを勝手に話してしまって申し訳ありません。あの時、芹沢さんが後悔しているように聞こえてしまったものですから。宏太も責任感のないことをする男ではないですし、お二人がすれ違っているだけなんだとしたら、生まれてくる子があまりにも不憫で。年寄りのお節介というやつです。すみません」

「いえ、謝らないでください。迷惑をかけたのは私の方ですから」

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