秘密の出産をするはずが、エリート外科医に赤ちゃんごと包み愛されています
これから家族になるのだと思うとまだまだ実感がわかない。
「なんて可愛い子なのかしら。芹沢さんに似て美人だわぁ」
「本当に天使よねぇ」
小さな我が子のおかげで病室内は終始幸せな空気に包まれた。
こんなに幸せでいいのかな。一昨日まで一人で育てていかなければと覚悟を決めていたというのに。
人生って何が起こるかわからないのだと身を持って体験した。
「杏奈」
「は、はいっ」
いけない、私ったらぼんやりしていた。三井先生はそんな私の顔を覗き込み、目を細めた。
整った顔立ちが甘い雰囲気に変わる。さらには熱の込められた瞳で見つめられ、全身に日がついたように熱くなった。
関根院長たちは午後からの外来が始まるからとほんの数十分ほどで帰って行った。病室には気持ち良さそうに眠る天使と、三井先生と私の三人だけ。
「あ、あの」
「なんだ」
「そんなに見つめられたら、照れます」
「そうか?」
妖艶に微笑む彼は私から視線を外そうとしない。それどころかどこかからかうように笑っている気さえする。
「楽しんでいます?」
「そんなつもりはない。ただ眺めていたいだけだ」
「なっ……!」