秘密の出産をするはずが、エリート外科医に赤ちゃんごと包み愛されています

気持ちを素直に表現してくれるのはいいけれど、ストレート過ぎて恥ずかしくてたまらない。

軽いと思っていたけれど真剣なようだし、いったい何を考えているのかさっぱりわからない。

「杏奈」

「きゃっ」

急に肩を抱き寄せられて距離が縮まる。すぐそばに三井先生の体温を感じ、あの夜のことがふと頭に蘇った。

甘く淫らに乱れた夜の三井先生の温もり、唇の感触。すべてが昨日の出来事みたいに色濃く私の中に残っている。

「み、つい、先生」

「宏太と呼んでくれ。杏奈もすぐに三井になるんだからな」

「宏太、さん」

「くそっ」

「どうかしたんですか?」

何かを必死に堪えるように余裕のない表情を浮かべる宏太さん。

「そんなに潤んだ瞳で名前を呼ぶんじゃない」

どこか切羽詰まったようにかすれる声。

宏太さんの瞳には私だけが映り、小刻みに揺れていた。

「どうしてですか?」

「はぁ」

わざとらしくため息を吐かれたが、その目には思わずドキッとするほどの熱を孕んでいる。宏太さんは私の耳元にそっと唇を寄せた。

「めちゃくちゃにしてやりたくなるからだ」

色気を含んだその声に全身が一瞬で熱を帯びた。

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