秘密の出産をするはずが、エリート外科医に赤ちゃんごと包み愛されています

急いで駆け寄り様子をうかがう。身体を抱き起こすと、唇を真っ青にして血の気が引いている斉木さんの姿があった。

これは、まずい。

息をしておらず、ヒヤリと心が冷える感覚がした。

「とにかく先生を呼ばなきゃ……!」

ううん、スタッフコールが先決だ。ポケットからスマホを出す手が震える。救命処置が必要な場面には何度か遭遇したことがあるけれど、慣れるものではない。

落ち着け、落ち着くんだ。

焦らずゆっくりすれば大丈夫。

院内で統一されているスタッフコールの番号を押すと、病棟内に大きな警報音が響き渡った。

コールさえしておけば、手が空いてる院内の医師や看護師が科に関わらずここへ駆けつけてくれるというシステム。

その間に私にできることをやらなくちゃ。まずはゴム手袋を装着して、斉木さんの口に装着された入れ歯を外す。そして口腔内の観察。夕食時だったこともあり恐らく食べ物を詰まらせ窒息したのだろう。

呼吸をしていないというのはかなり危険だ。数分経つと脳への影響が出てしまう。

まずは後ろから覆い被さるように胃部を圧迫して、両手で思いっきり押さえた。

< 12 / 122 >

この作品をシェア

pagetop