秘密の出産をするはずが、エリート外科医に赤ちゃんごと包み愛されています
「ルート確保して昇圧剤投与。輸液全開でよろしく。よし、挿管チューブ入った。呼吸音確認するから、聴診器ちょうだい」
「はい!」
テキパキと指示を出す三井先生に置いていかれないよう、自分の手技に集中する。急変の場面ではチームワークが大切だ。焦らず、自分の役割をきちんとやることが大事。
山場は去ったので、さっきよりも落ち着いて行動することができた。
「ご家族は?」
容態が安定して、危機的状況はなんとか免れた。これも全部三井先生の的確な処置のおかげ。
その場にいたスタッフ全員が安堵の息を吐く。
「お孫さんが外でお待ちです」
「説明するから入ってもらって」
「はい。あ、芹沢さん、落ち着いたからそろそろ帰ってもいいわよ。あとは夜勤の私たちで対応するから。日勤なのに悪かったわね」
「いえ、せめて夕食が終わるまではお手伝いさせてください」
「そう助かるわ。ありがとう」
その後、他の患者の夕食トレイの下善や投薬を済ませた。
食事時は猫の手も借りたいほど忙しく息つく間もない。
小一時間ほど夜勤業務を手伝ってから病棟をあとにした。
「疲れたぁ」
ロッカールームでようやくホッと息をつく。
変な汗がじっとりと全身に浮かんでいる。
最後の最後でヘトヘトになったけれど、斉木さんが無事でいてくれてよかった。
着替えを済ませ、職員玄関から外へ出た。昼間の熱気を残したような暑さにげんなりとした気持ちになる。
早く帰ってシャワーを浴びよう。
そうすればスッキリするはずだ。