秘密の出産をするはずが、エリート外科医に赤ちゃんごと包み愛されています
「どうしてそんなに驚いているのよ。全世界でも成功例がほとんどない難しいオペを成功させたんでしょう? どの科でもその話題で持ちきりよ」
「あ、ああ、その話か」
「他に何かあるって言い方ね」
「ま、まさか」
「ふふ、そう?」
面白おかしく笑う美咲に咳払いをひとつする。
三井先生は宮花附属大学病院の医師の中でも、よくテレビ番組で取り上げられたり何かと話題の人物だ。そのせいなのか、科がちがっても病院内のすべてのスタッフが彼を知っている。
女性ウケする華やかな容姿も相まって、医局秘書や看護師はもちろん、院内のありとあらゆる女性がこぞって三井先生にアプローチしているらしい。
「それにしてもすごいわよね。三十五歳にして教授をも凌ぐあの風格。次期教授候補とも名高いお方だし、射止められたら玉の輿……ああ、最高」
「なにを言っているのよ、ラブラブな恋人がいるくせに」
「ふふ、まぁね。冗談よ」
頬を赤らめながら恋人の顔を思い出しているであろう美咲には、高校生の時から付き合っている彼がいる。
私も一度紹介してもらったことがあるけれど、笑顔が素敵な好青年風の爽やかな男性だった。
美人な美咲とはとてもお似合いで、まさに絵に描いたような仲睦まじい二人の姿を見て、恋人の存在を羨ましく思ったものだ。
その後も次々と料理が運ばれてきてはアルコールが進み、美咲も私もいい具合いに酔っ払った。
気兼ねのない同期との関係はずっと大事にしたい。
「これで明日からもまた頑張れる。杏奈がいてくれてよかったよ」
「こちらこそありがとう。じゃあまたね」
ほろ酔い状態で店をでて、そのまま駅に向かい改札で美咲とわかれた。