秘密の出産をするはずが、エリート外科医に赤ちゃんごと包み愛されています
「す、すごい」
三井先生に連れられたのはテレビでもよく見る有名な高級ホテルだった。
ロビーは華やかなシャンデリアが飾られ、フロアも輝きに満ち、立っているだけで場違いのような気がしてくる。
「私、こんな格好なんですが」
「ああ、問題ないよ」
さすがにジーンズではないものの、ドレスコードと呼ぶには程遠いフェミニンなフレアスカートとトップスにはニットを合わせて着ている。
一組あとから入って来たカップルの女性は大胆に背中が開いた真紅のドレスを着用し、身につけているアクセサリーはダイヤで、指先まできれいにネイルが施されていた。
切り揃えた地味な爪、お洒落っ気なんて一つもない私。
慣れないせいでそわそわしていると、再び腰に手が添えられた。
「あ、あの」
「いいから俺にまかせて」
艶やかな声が耳に届く。
非日常というこの空間では三井先生の存在だけが頼りだ。
隣にいてくれるだけでホッとさせられ、私はその腕に恐る恐るしがみついた。
「やけに素直だな」
「か、からかわないでください」
「そんなつもりはないよ。さぁ、乗ろう」
エスコートされながらエレベーターに乗せられ、最上階にある会員制のラウンジへと連れられる。
ロビーと違わぬゴージャスなシャンデリアが目を引いた。
「三井様、ご来店ありがとうございます」
「今日は連れが一緒なんで個室をお願いします」
「かしこまりました、ご案内致します」
黒服のスタッフに個室に通される。
横並びのスツールと専用のカウンターがあり、正面は窓でスツールから景色が臨める造りになっている。