秘密の出産をするはずが、エリート外科医に赤ちゃんごと包み愛されています

外はまるで宝石が散りばめられた世界のよう。

全面がガラス張りということもあり、余すことなく隅々まで夜景が広がる。

「素敵……」

なんてチープな言葉だろう。まさか自分がそんなワードを使う日が来るなんて思わなかった。

「気に入ってもらえたみたいで嬉しいよ」

「そ、そうとは言っていませんから」

「素直じゃないなぁ」

そう言って苦笑する三井先生。

実際はこれほどの場所に連れて来られて喜ばない女性はいないだろう。

「バーテンダーはどう致しましょう」

「彼女とゆっくり話したいので二人きりにしてもらえますか」

「承知しました。それではゆっくりとお過ごしくださいませ。後ほどオーダーを取りに伺います」

『二人きり』

変な意味ではないとわかっていても、意識せずにはいられない。

「奥へどうぞ」

「ありがとう、ございます」

三井先生に言われて腰より高い位置にあるスツールに座ろうとする。

さり気なく手を差し伸べてくれるところがまた、慣れているなと思わされる。

きっと誰に対してもそうなのだろう。

だから期待なんかしちゃいけない。

動揺を悟られてはいけない。

気丈に振る舞わなければ。

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