秘密の出産をするはずが、エリート外科医に赤ちゃんごと包み愛されています
一夜のあやまち
目の奥に感じる薄暗い光は、私が知っているそれとは違っていた。
遠くに水音まで聞こえて、だんだんと意識が現実味を帯びてきたところでまぶたを持ち上げると、まず最初に飛び込んできたのはシャンデリアのほの暗い光だった。
えっと、ここは……?
ひと目で自分の部屋ではないことを理解した。
まだかすかにふわふわする頭でとにかく冷静になろうと身体を起こすと、肌触りのいいシルク素材の掛け物が音もなく床に滑り落ちた。
カーテン代わりのブラインドの隙間から真っ暗な闇が覗いている。
ということはまだ夜なのか。
何時ぐらいなのだろうと時計を探すも見当たらない。
ここは多分ホテルの一室。
昨夜自分の身に起きたことははっきりと覚えているが、バーの個室を出たあとの記憶はすっぽり抜けている。
「起きたのか?」
「あの、えっと」
急に声をかけられ、ビクンと肩が跳ね上がる。
バスルームから髪を拭きながら現れたのは三井先生だった。
今のこの状況を予想していたとはいえ、私は彼の姿を見て瞬時に固まる。